池内了教授の講演会


1999.12

池内了教授の講演会(名古屋大学大学院理学研究科、専門は宇宙論、天体物理学)

先週の土曜日、神経内科同窓会で池内先生の宇宙に関する講演が行われた。11月に行われた第一内科の同窓会では東大教授による宇宙の話もあったが、東大教授による講義は、なんと小学生向けの宇宙教室で質問される問いに対する答を発表する形式でなされた。大人も同様の質問を発するとのことで、我々、医学の専門家をないがしろにするような始まりだったので興ざめで、途中かなり居眠りしていた。

でも、池内先生による講義は非常に面白く、ユーモアにあふれたものだった。宇宙論の歴史で興味深いのはインド哲学の考え方だった。地球を3頭の牛が支え、それを巨大な1匹の亀が支え、そしてそれを蛇がとり囲んでいる図が紹介された。蛇が円をえがいて、自分の尻尾を自分の頭にある口の中に入れる姿であり、転生輪廻をあらわしているそうだ。宇宙に始まりがあり、また終わりがあり、また始まりがある。

彼は宇宙の泡理論を提唱したことで有名だ。彼が論文を発表後、5年後に彼の唱えたように銀河系が泡の表面に密に存在していることが、5年間にわたる観測結果により判明した。但し、彼の予測した泡のサイズは1000万光年だったが、観測結果は1億光年だった。そのため、彼の理論は泡のごとく消滅してしまった。彼のいわゆる定説(仮説)が観測結果により覆された。

彼は京大卒-北大-阪大-名大と旧帝大を渡り歩いたことでも有名だそうだ。彼は非常に文学の素養があり、最近出版された下記の著書は、読んでいて楽しい。是非読まれるといいでしょう。

天文学者の虫眼鏡 文学と科学のあいだ (文春新書)

『方丈記』

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたたかは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし

p83より引用:

「ノーベル賞を貰うような仕事は超一流で、よほどの才能と運がなければならない。普通の研究者はせいぜい十年は学界をリードできる一流の仕事を目指しており、そのような仕事がいくつも出せた人は真に一流の科学者と言える。私のような凡百の研究者は、そのような仕事が一つでも出せれば良い方なのである。「河の流れは絶えずして」とばかり論文をせっせと書き続けるが、「うたたか」のように注目されないで消えてしまうか、「シャボン玉」のように少しは飛んでも数年で消えてしまう論文がほとんどなのだ。「かつ」消えても挫けることなく、なんとか努力が「かつ結びて」「うたたか」のような論文を生産している研究者がほんとど、と言ってもいいだろう。(中略)

科学の研究はそのような膨大な失敗や無駄があってこそ進むものだとも言っておきたい。膨大な失敗の上に、ごく少数の成功の花が咲くのだから。それを否定して、すべて正しい答の論文を書くべしとすれば、クソおもしろくもない。当たり前の仕事しか出ないだろう。だから、私は思い切ったアイデアで勝負するような仕事が好きだし、それを詐欺紛いだと言われても、研究とはそんなもので、だからなかなか止められないんですよ、と答えるしかない。

かくして「久しくとどまりたるためしなし」と次の問題に向かって冴えない頭を絞っている毎日である」

この講演後の僕の大学出身の男が質問した。

問:宇宙は膨張しているが、ある時点では収縮に向かうのですか?

答:どうも、限りなく膨張するのではないかというのが、正しいようです。

S教授の質問:

問:宇宙には果てがあるのでしょうか?

答:我々が実証的に研究できる範囲は観察できる範囲で150億光年が限界です。但し、150億光年先の向こうはどうなっているのかですが、また別の宇宙が無限大に存在している可能性も考えられています。そして、我々の存在空間は3次元であり、それに時間軸を加えると4次元の世界です。理論上は11次元の時空間までがあります。

PS:医者でも宇宙論に興味のある人がいて、懇親会の席上、彼の著書にサインをしてもらっている人がいた。僕は、上記の本を書かれていますねという簡単のあいさつをした。

 

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