隔離タンク、対外離脱体験、過換気症候群


   隔離タンク、対外離脱体験、過換気症候群

 

 立花隆の『臨死体験』(文藝春秋社)の中に、瀬名秀明の『Brain Valley』(角川書店)の登場人物である広沢が利用した、隔離タンク(科学者リリーが開発)を立花隆は実際に体験したことが書かれていた。この隔離タンクは映画『ISOLA』という多重人格少女の物語でも、メインの仕掛けとして使用されていた。またノーベル物理学賞を受賞しているファインマン博士もリリーに勧められ、隔離タンクの経験をした。リリーは体外離脱体験に成功したが、現実体験ではなく幻覚であると考えた。立花隆の体験では、わずかに自我と肉体の分離を感じた。また、彼は過換気(口で大きく息を吸ったり、吐いたりすることを早く連続的に行う)を行うことにより体外離脱も試みた。この過換気を自分の意志で実行したが、数ミリ位、自分の体ともう一人の自分がずれたという経験をしたが、本格的なものにはいたらなったと彼は述べている。隔離タンクも過呼吸もよく似たようなものであり、どちらも肉体が消失することにより意識だけが残ったと述べた。過換気症候群について彼は以前、NHK教育テレビ番組でコリン・ウィルソンと対談した時、間違って血液の酸素が増加することにより症状がおこることを述べたが、『臨死体験』では正しく二酸化炭素の増加による呼吸性アルカローシスによると訂正していた。

 

      過換気症候群

 

 過換気症候群(Hyperventilation syndrome):若い女性が失恋したときや、最近では中学生が集団で、この症候群をおこすことが報道された。僕が研修医だった時に何人かの患者をみたが、ほとんどが失恋の症例だった。但し、最近パニック障害という病気が注目されてきて、原因、誘因がはっきりしない状態で胸部不快感や過換気症候群をおこしたりする。脳幹部の青斑核の異常が指摘されている。

 過換気症候群の患者は、息苦しい感じがして不安になり、急に呼吸が深く早くなり、過換気となる。換気が過剰になると、血液中の二酸化炭素が肺胞から外気に出てしまい、血液がアルカリ化する。通常、血液はpH7.4に保たれている。二酸化炭素は水に溶けると、炭酸という弱酸性になるが、これが減少するので、血液がアルカリ化する。pH7.6位になると脳の血管収縮がおこり、脳の血流が低下するため、自覚症状として頭がぼっーとするとか、場合によっては意識がもうろうとなる。また血液がアルカリ状態では、遊離Caイオンの低下がおこり、テタニーを引き起こし、血清リンが低下することにより、両手足のしびれ感も出現する。

 かなり昔の映画だが、故Steve MacWeenが主演したTowering infernoという高層ビル火災の映画があった。女性がエレベーターのなかで過換気症候群の発作を起こした場面があった。その時の治療として、紙袋で患者の鼻、口をおおい、ゆっくりと呼吸をさせることにより症状が改善したが、実際の治療も同じことをする(紙袋再呼吸法)。逆に息苦しいということで、酸素を与えるとよけいに症状が悪くなる。但し頻回の呼吸をしている時には、過換気症候群だけで見られるわけではないので、他の疾患の鑑別が重要となる。たとえば重症肺炎があり、低酸素状態が見られる時は頻呼吸となる。この場合は肺実質性障害のためであり、高濃度の酸素の投与が必要である。酸素飽和度が低下しているので、低酸素血症があるかはすぐにわかる。

 一方、神経疾患のなかで難病中の難病であり、筋萎縮性側索硬化症(ALS, アミトロ、英国の物理学者のホーキングが罹患している)の患者が呼吸困難に陥り、頻呼吸、チアノーゼを呈している時の呼吸障害は、拘束性障害と言い、呼吸筋や横隔膜の萎縮、脱力により、呼吸が困難となる。この場合は高濃度の酸素を経鼻的に投与すると、CO2ナルコーシス(動脈血CO2分圧が上昇して、意識障害をひきおこす)をおこすので、要注意である。

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神経内科専門医 neurologist
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