ミトコンドリア・瀬名秀明


 以前の日記の一部を紹介する。

 

                ミトコンドリア

 河野重行著:ミトコンドリアの謎(講談社現代新書)のプロローグに粘菌、熊楠そして次のような記載があった。

「瀬名秀明のベストセラー小説『パラサイト・イヴ』はお読みになっただろうか。文庫本や映画にもなっており、テレビコマーシャルもあったので、「パラサイト(寄生者)」「ミトコンドリア」といった言葉も市民権を得たように思われる。「なぜこんなにもミトコンドリアに魅せられるのだろう」とは葉月里緒菜演ずる主人公、聖美の言葉である。しかし、現実の世界でも、ミトコンドリアに魅せられた多くの研究者たちがいる。――

 この文をどこかで見たことがあると思って文献を見ていたら、『遺伝』という学術誌に書かれていたのと同じ文面だったのだ。

 僕が医学生のころ名大生化学の小沢高将助教授はミトコンドリアの専門だったが、その当時はまだDNAの存在は不明だった。でもこの本によると、1968年にペンシルバニア大学でナス夫妻が初めて発見したことになっている。では、1970年に生化学の講義を受けていたから、そのころはDNAの存在が確定していたことになる。あまりにも発見初期だったので講義で教えてもらわなかったのか、記憶が定かではない。小沢助教授は破天荒な方であった。その当時の生化学の教授は八木國夫先生で学生の試験が難しいことで有名だった。1回目の試験で合格するのは毎年5人前後だった。僕は幸いなことに1回目で合格し成績は優をもらった。その時の試験問題は2題だった。1題目は人間の合成は可能か?というとんでもない問題だったが、当然、可能ということで答案を作成した。2題目はSH基の機能について述べよだった。和歌山毒入りカレー事件で有名になった砒素はSH基に結合して酵素障害を起こす。

 ミトコンドリアの研究は進展し、いくつかのミトコンドリア病が発見された。最近では、きんさん、ぎんさんなどの超長寿老人のミトコンドリアDNAに異常があることが発見されている。

 また、ミトコンドリアDNA異常による糖尿病が発見され、注目されている。 糖尿病、難聴、脳萎縮、A-V blockを認め、mt-DNAt-RNA3243の変異を確認した一例を経験したことがある。髄液中の乳酸34.6mg/dl(9-25), ピルビン酸1.08mg/dl(0.62-1.2)と高値を認め、乳酸/ピルビン酸比も31.1と著明に上昇していた。

              ミトコンドリア脳筋症の臨床像

本症例では感音性難聴、糖尿病を主徴とし、神経筋症状はほとんど示さなかった。しかし血中、髄液中の乳酸、ピルビン酸が高値を示し、ミトコンドリア脳筋症の可能性が考えられた。本症例とミトコンドリア脳筋症の三大病型との比較すると、本症例では母系遺伝思われる難聴があり、脳萎縮があり、筋生検でragged red fiber,ミトコンドリアDNAt−RNA3243AからGへの点変異が証明された。この3243の点変異は、Mitochondrial encephalomyopathy,  lactic acidosis, and stroke−like episode(MELAS)80%の症例に証明されている。本症例は頭痛、異常感覚、脱力感の訴えはあるが、MELASにみられるような痙攣発作、stroke−like episodeが認められなかった。本症例ではMELASでは、あまり報告例のない小脳失調と心伝導障害がみられた。小脳失調はMERRFmyoclonus epilepsy with ragged red fiber)にみられることが多く、心伝導障はCPEO(chronic progressive external opthalmoplegia, Kearns-Sayre syndrome)に多いとされている。(医学生時代に神経内科実習の時に受け持った症例は、CPEOの患者であり、当時はopthalmoplegia-plus と呼ばれていたが、ミトコンドリアの異常があるとは夢に思っていなかった)                           

  最近、明らかにMELASと診断できないMELASの不全型があり、この家系に母系遺伝をするミトコンドリアDNA3243の変異、糖尿病、難聴が高率に見られるという報告が多くなされている。本症例もMELASの不全型と考えられた。本症例では、内因性インスリン分泌が低下しており、ミトコンドリア異常による膵島機能不全が糖尿病の原因と考えられた。本症例はMELASでは少ない小脳失調と心伝導障害がみられた。ミトコンドリア遺伝の特徴は、heteroplasmyのために多彩な症状を呈する。

          瀬名秀明氏のパラサイト・イヴと講義の感想

  以前、福井医療技術専門学校で神経内科の講義を毎年行っていたが、試験問題として100点満点のうち20点(何を書いても20点与えることにしている)を講義に対する感想や要望を書いてもらっていた。以下の感想は学生が書いた文章だ。

 ”授業の内容も濃いのに、ましてや先生の豊富な話題性に富んだ雑談はより楽しかったです。お陰で昼休み後の睡魔に襲われることも少なく授業に臨めたと思います。私はいまカールセーガンのコンタクトを読んでいて、また数年前にパラサイト・イヴも読みました。パラサイト・イヴは理系の人でないと、なかなか理解できにくい所もあったりして、少し勿体なくも感じましたが、私の仲間内ではかなりの評判になり、1冊の本を回し読みして楽しみました。(当然と言えば当然ですが、あれはワープロで書かれた内容ですね)先生は宇宙人の存在を信じていらっしゃるようですが、私は外宇宙は内宇宙につながっているのでは?という持論を持っています。精神と物質はおもしろかったです。先生とは読書の趣味が合いそうな気がしてなりません。(K.Y.

 ”先生が講義でミトコンドリアの話をされたので、パラサイト・イヴの映画をTVであった時に、つい見てしまった。ぼくも先生が言われた通り、最後の場面は納得いかなかった。講義中に1週間の出来事、ワイドショウの内容などを話してもらえるので、とても楽しい講義でした。UFOの話をされた時の講義は一番楽しかった。 (Y.O.)

 "パラサイト・イヴは読みました。原作はおもしろかったのですが、映画はいまいちだったように思います。先生の授業は聞いていてとても楽しいです。とくに授業の合間に話してくださる余談がおもしろいです。テレビの話か読んだ本の話、自分の体験など今日は何の話をするのだろうと思って楽しみに授業にのぞみました。もちろん授業も聞いていましたが。 (A.S.) 

 "先生の講義のおもしろさは、やはり先生の興味あることが話題にのぼった時です。マージャンや私生活の話もおもしろく、授業後にも皆で話題にしていましたが、私にやはり私も読んでおもしろいと思ったパラサイト・イヴの話が最も印象深かったです。それまで単なるエネルギー源としてかみられていなかったミトコンドリアの逆襲という超非現実的なストーリーが薬理学や生理学、生物学のもとに、超現実的に転換していく様は少しも不自然ではなく、どんどん引き込まれていきました。(実はテストの前日に1日で読んでしまったのです!) これも今、最も注目されているといっても過言ではない遺伝子の力でしょうか。授業中、読んだことある人といわれて、顔のあたりまで挙手したのですが、先生からは見えなかったようで、私はそれ以上の行動に出るのが恥ずかしくてそのままにしていました。すいませんでした。今後も素敵な笑顔で印象深い授業を続かれていくことを願います。短い間でしたが、ありがとうございました。 (K.T.)  

"先生の講義では、授業の合間の雑談がとてもおもしろかったです。パラサイト・イヴを私もテレビでみたのですが、先生のおっしゃった通り、三上ひろしが燃えているのにいたくないのかとか、きれいに死にすぎなどと思いました。だから、同感する人がいて、すごくうれしかったです。どうもありがとうございました。 (N.Y.)

"時々、授業からそれた話をすることがあったが、それが結構おもしろく授業よりそちらの話の方が楽しみでした。特にミトコンドリアの話はおもしろく、僕がビデオでパラサイト・イヴをみた次の日にこの話をしたのでとても興味深かった。ビデオで見た時、ミトコンドリアは母親からの遺伝で、アダムとイヴのものがずっと受け継がれていて、そこから最初の人類は今のところアフリカである、その他それ自身でエネルギーを作り、実は寄生虫の一種とも考えられるなど、これらのことは本当なのかなと思っていたので、本当ということがわかり、うれしかった。ビデオの内容的には最後はちょっとわけがわからなかったけれど、今度、小説も読んで見ようと思った。これからもこのような話を授業の合間にしてください。 (H.A.)

 "講義では、時々、授業だけでなく、脱線して他の話をしてくれたことがおもしろかった。ミトコンドリアの話から、イヴにまで話がつながった時には、おもしろかったです。あと雪がたくさん降っていた時に、自分の体験談をはなしてくれたりと、授業の途中のその小話みたいな感じがよかったです。神経内科は聞いていると、こういう病気もあるんだと思ったりなどし、興味をひかれる部分がたくさんありました。個人的に新しい事を知る事がすきなので、神経内科という分野は、普通の生活では知ることのできない分野で、始めて知る事がたくさんありました。 (S.T.)

http://www.asahi-net.or.jp/~fx2h-szk/katharine/new.html

 

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