ノーマン・カズンズ:人間の選択


  ノーマン・カズンズ:人間の選択-自伝的覚え書き(角川選書1985)

僕は1980年代の初期にペンシルバニア大学で研究生活を送っていた時、ワシントンのポトマック・リバーに飛行機が墜落した時、寒冷の河に沈みゆく女性を勇敢にも助けにいった男性がいたが、僕も周りの人もアメリカ国民も一様に感動した。また、僕はフランス革命の時の自由・平等・博愛という精神が好きだが、自分の命を捨ててでも戦わねばならない時もあると思う。

ところで、ノーマン・カズンズは膠原病にかかりながら奇跡的に回復したジャーナリストで、この著書を発表時はUCLAの医学部の医学教養講座担当教授だった。この本の中から僕が共鳴したところを取り上げる。*は特に共感した内容だ。なお、この本は現在、絶版となっている。

第一章 教室としての20世紀

*”人の一生の中で最も重要なのは体験の性質や範囲ではなくて、その体験から学びとったものである”

”一番重要な教訓と言えば、新しい選択(オープション)を創造し、その選択を行う能力こそ、人間の独自性の主要な要素の一つであるということである”

”人は自分で作り出した問題を自分で解決する潜在能力を持つ”

*”人間の最大の成果は、その脳に関する知識の拡大である”

*”人間の脳がそれ自体を認識する能力こそ、脳の最も素晴らしい業績なのである”

*”脳の生産する膨大な種類の物質がすべて、人間の発展と潜在能力の発揮と健康の維持と闘病と関わりを持っているのである”

*”プラシーボ(偽薬)の使用によって起こる作用の伝達、連絡の仕組みは、プラシーボなしでも、そっくりそのまま働くはずだと言うことも分かる。それを動かす主な要素は人間の信念系(Belief system)である”

*”人間の能力は必要に応じて成長する。人間が知的、精神的、哲学的に成長しえる限りは人間にはチャンスがある。しかし潜在能力には同時にコントロールという前提条件がついている。あることをする能力には、その行動が無謀に行き過ぎないように自制する能力が伴わなくてはならない”

第2章 選択をはぐくむ学習

”闇が深ければこそ、星がみえる”(これは、五木寛之氏のマイナスからの出発の考えと似ている)

シュバイツッァー博士の学んだこと:

”難しいことに出会った時、他人がそれを片づけてくれるとあてにするな”

”生に対する尊敬こそ、宗教と哲学の合致するところであり、社会のめざすべきところである”

”今までに見た苦しみが私に力を授けてくれ、人間仲間への信頼が未来の私の確信を支えてくれる”

ジャワハラル・ネールの学んだこと:

”旅を企てたら、目的地を見失わないことが大切”

”真の友情は稀なものだ。だからこそ、それは大切にはぐくまなくてはいけないんだ”

”官位が高ければ高い程、責任が重ければ重い程、孤独はいよいよ深い”

ロバート・F・ケネディの学んだこと:

”重い責任に就く者の最大の特権は本当の知識を備え、その誠実さに頭のさがるような人々の援助を求めることができることだ”

アインシュタインの学んだこと:

”子供の好奇心によく注意を払え。そこにこそ、最も新鮮で最も貴重な知識の探求がある”

”私の考えがもとで、人々はニュートンの物理学を再検討するようになった。私自身の考えもやがて再検討され、別の考えにとって代わられるのは不可避である。もしそうでなかったら、どこかに大きな間違いがあることになるであろう”

サミュエル・ジョンソン:

”誠実さの欠けた知識は危険千万な代物である”

プラトン:

”正義と無縁な知識は、知識にあらずして狡知である”

著者:

*”本当の学習の一つのしるしは、ありとあらゆるものは知りつくせるものではないという事実をわきまえて、悠々と賢明に生きていく能力である。そういう人は、あることを知らなかったからといって、別に恥とは思わない。知る必要があれば、知る手段は十分に心得ており、答を評価することもできるからである”

”真の教養人とは自己の環境についての相当の知識を持ち、自分と周囲の人々の福祉のために適切な行動をとり、またある原因のもたらす結果を考慮し、予見することができ、原因への適切な対応に力を貸して、結果の制御を助ける人である”

*”世界の大部分における教育の大きな失敗は、教育が人々に人類意識ではなくて、部族意識を持たせてしまったことである”

”個々の人の命のもろさと大切さを重んずること、それが今日もなお、最初に教えられるべきことである”

*”考えを他人に伝達できなくては無用に等しい。考えを伝達するための要件は、因果関係の順序に沿った、できるだけ明確な論理構成である。人が社会に影響を与えようと思うのなら、まず第一歩として、表現の技術に十分な注意を払うべきである”

*”我々は一番大切なものを欠いている。それは考える時間と考える習慣である。思考は人間の歴史の基本的なエネルギーである”

ヘルムホルツ(検眼鏡の発明者):

**”効果的思考の三大段階;第一段階では、ある問題のあらゆる側面について、あらゆる角度からの詳しい検討を行う。第二段階では、ある問題、ある考えが潜在意識にまで浸透するように、十分時間をかける。そうすれば、心が特に注意を向けていない時点でも、それを忘れずに考え続け、考えを発展させることができる。第三段階というのは考えが十分に熟して、形をとる状態を指す”

著者:

”人間の傷や痛みに無頓着な態度は、教育失敗のこの上なく明白なしるしである。それは、また自由社会の終わりの始まりである”

”学校教育はともすれば、型にはまった杓子定規なものになりがちで、宇宙の中でもユニークな我々のすみかの驚異と美とを悟るように、人間の心に風穴をあけてはくれない。だから、若者たちが人間の苦痛を軽視し、感受性を台無しにされても平気でいるようになるのも別に不思議ではない”

*”教育の第一の目的は人が自分の思うことをはっきりと言い、それを相手に理解させ得るようにすることである。不明瞭な表現は美徳ではない”

”いい教育は我々が自我の偏狭な枠を脱し、共感をもってーいや、共感では弱すぎるー慈悲、博愛の情をもって、人道の本流に参加できるようにしてくれる”

”我々の社会が必要としているのは、社会の隅々にまでしっかりと感受性を回復させることである。教育の第一の目的は生に対する尊重の念を持たせることである。その問題に関連のある課目では人間の感受性の実相と、その感受性を洗練し、敏感にする必要、愛することの自然さとそれを強めたり、弱めたりする条件、人生の基本条件としてのプライバシーの権利、粗暴化のもとになる鈍感さを防ぐ必要などを教えなくてはならない”

*”まず、手をさしのべて、一番近くにいる人の手を握ってやればいいのだ。そうすれば、たとえその他の人を助けることができなくても、少なくとも一人は助けたことになる”

”主要な各宗教にお互いの間の違いばかり説明することを止めさせよう。基本的一致点を探すことを始めさせよう”

*”凡人というものはない。天から授かる生命には必ず道徳の輝きが備わっている。人間は、それぞれの内部に帰依と献身と犠牲と相互扶助の無限の能力を秘めている”

*”誰でも死を恐れなくていい。ただ一つ恐れなくてはならないのは、自分の持つ最大の力を知らずに死ぬことである。それは、自分を他人のために捧げる自由意志の力である。我々の力で他人の内部に何かが蘇ったら、その時、我々は不死に近づいたのである。自分の道徳的能力を完全に発揮しない人は心のやすらかさを得ることはできない”

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marugametorao について

神経内科専門医 neurologist
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ノーマン・カズンズ:人間の選択 への1件のフィードバック

  1. 鈴木修一 より:

    勉強になりました。ありがとうございます♪

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