赤い氷河期(松本清張)、SARS


赤い氷河期(松本清張)、SARS (2003年の日記:一部改訂)

 

 SARSという病気が急にアジアで出現してきた。このウイルスによる呼吸器感染症が重篤であることから、僕はとっさに松本清張作の“赤い氷河期”を思い浮かべて、もしかしたら遺伝子操作が加えられた生物兵器が実験室からもれたのではないかと推測した。その作品はヒットしなかったようだが、インフルエンザウイルス遺伝子にエイズウイルス遺伝子を導入した生物兵器が使用されてしまう物語だったと思う。

 

 僕はその作品が出版される6年ほど前に、ペンシルベニア大学医学部でcorona virusの一種で脳炎を起こすJHM virus の研究をその方面で研究を始めていたSusan Weiss博士(現在ペンシルベニア大学教授)と脳の培養グリア細胞への感染実験を行っていた。その論文はMicrobial Pathogenesisに発表された。Lavi E et al: Coronavirus mouse hepatitis virus (MHV)-A59 causes a persistent, productive infection in primary glial cell cultures. Microb Pathog. 1987 (2):79-86. 

 

 しかも、その作品が発表されるころに僕は密かにエイズウイルスのヒト脳由来のグリア細胞に感染実験をウイルスの専門家と共同研究を行っていた。その成果については、医学のあゆみに報告したが、英文で書くべきであったと、後になって後悔した。

 

 ウイルスの外壁をインフルエンザウイルスの遺伝子で作り感染しやすくし、中身はエイズウイルスの遺伝子を導入するという松本清張のアイデアには驚いてしまった。

 

 NEJMの4月10日版(電子版)によると、50~60%が既知のcorona virus遺伝子が見られるそうだ。しかし、今日、喫茶店で読んだスポーツ新聞の記事によると、CD4陽性T細胞の低下が見られることが初めて明らかにされ、免疫力の低下が他の感染症の合併を容易にしているのではないかとの推論だった。まさしくエイズウイルス(HIV)の作用ではないかと思い、少し緊張した。

 

 今回の発端の医学部教授の専門は何であったのかを知りたかったが、インターネットを調べても発見できなかった。中国当局は何かを隠しているのかもしれないが。別の可能性としては動物の免疫不全ウイルスがcorona virusと自然に遺伝子組み換えがおこり、本来は人には感染しない動物の免疫不全ウイルスがcorona virusの外膜をかぶって人に侵入したかもしれない。なお、これらは僕の独断的な推論であるので、研究者たちの検索の結果を待ちたいと思う。

 

PS:2日前、熱が39度もあり、頭痛、吐き気があり、1日中寝ていた。小学校に一度だけ風邪で休んだことがあったが。今回は二度目だった。同じような患者がその3日前の外来新患でいたので、感染してしまったのかと思った。幸いなことに1日で正常に回復した。なお、薬はロキソニンとクラビットを服用したが、高熱環境でウイルスの増殖が抑えられたのかもしれない。脱水にならないように水分は十分補給したが、発汗がすごかった。

 

PS:“赤い氷河期”内容(「BOOK」データベースより)

西暦2005年、現代のペスト、エイズは猖獗を極め、患者は一億五千万人にも及ぼうとしていた。一方で世界情勢は激しく揺らぎ、改革に失敗したソ連には独裁政権が誕生し、ヨーロッパは連邦を形成しつつあった。エイズの急激な蔓延を訝しむ山上と彼の周囲に出没する謎の男・福光。背後で蠢くのは何者か? 新型エイズ・ウイルスをばらまいたのは誰か?近未来を舞台に描く長編サスペンス。

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