長島茂雄さん、右手をズボンのポケットに入れて現れる


長嶋茂雄さんが、麻痺した右手をズボンのポケットに入れて東京ドームに姿をあらわした。左隣には、主治医の内山真一郎教授の姿が見られた。以前、掲示板で長嶋監督の病状についてコメントしたことがあった。

 

         長嶋茂雄監督の病状は? (04/03/14)

 連日、長嶋茂雄氏の病状がマスコミで報道されている。彼は我々団塊世代のヒーローであった。入院当初、医師団は、右片麻痺は軽度であると発表したが、実際はそうではなく、右上肢は高度、右下肢は中等度の麻痺であることが、発表された。歩行可能レベルまで回復すると推定されるが、右手の回復についてはかなりの後遺症が残るかもしれない。

入院当初に一番心配だったのは、左中大脳動脈の起始部が閉塞し、数日以内に発生する可能性のある血流再開による出血性梗塞であり、また、著明な脳浮腫であった。これがクリアーされたので、生命的な危機は回避された。

 次に問題になるのは言語機能である。右ききの場合は左大脳半球が広範に障害された時、理解不能、発語不能という全失語という重篤な神経症状を呈することがあるが、これも免れた。糖尿病や高血圧がなく、血管の動脈硬化がなかったので、前、後大脳動脈などからのバイパス血流があったため、梗塞部位の範囲が最小限にとどまったのであろう。

 しかし、主治医の言語機能の説明は少し問題点がある。内山教授は失語症の範疇には入らないであろうと、言及し、一方、岩田誠教授は重篤な失語症とはまったく考えていないと述べていた。実際は軽度~中等度の運動性失語の状態が存在すると推定される。自発言語は少なく、物品呼称障害もあるのではないか?書かれた単文を読むことができるので、失読はないが、自発的に単文を発することはできないのではないか?文字盤の文字を読む練習をしているのは、しゃべりにくいという、右舌の麻痺による構音障害以外に、理解は可能であるが、言いたい言葉を発せられない運動性失語が存在していると推定される。言葉の反復は可能のように思われるので、リハビリにより、発語はかなり改善されると思うが、彼独特の言葉を発するのは困難かもしれない。

 一昨日のニュースステーションのインタービューは最後の記念的なものになるかもしれない。妻となる女性との出会いの話や、マリリンモンローの話が面白かった。また、久米宏とのキャッチボールはできなくなるのであろうと思うと、残念でならなかった。アテネの代表監督は恐らく無理であろう。ストレスをかけると、発作性心房細動が再発するかもしれない。ワルファリンを服用することになるので、かなり脳塞栓は予防されると思うが。

脳梗塞片麻痺患者の脳の代償機能 (04/03/14)

 以前、大学での症例検討会で下記の論文を取り上げたことがあった。長嶋茂雄氏の脳梗塞(脳塞栓)に関する記事が連日、報道されているので、片麻痺患者の脳機能の代償はどうなっているのかを知るために、その論文の要約を紹介する。

 藤井幸彦、中田力:機能代償における脳活動の変化、神経進歩 43: 552-559, 1999

 脳機能画像の進歩は脳疾患患者における脳活動の変化を臨床的に追跡可能にした。脳梗塞などによる片麻痺患者の機能代償の過程は、同側(健側)の運動感覚野、補足運動野が重要な役割を果たすことが明らかになった。末梢神経障害においても麻痺側感覚運動野の賦活領域の拡大、健側掌握運動時の小脳賦活など中枢神経のreorganizationが見られ、運動機能障害の代償における脳幹網様体の関与が示唆されている。

可塑性は脳の持つ基本特性の一つである。器質的脳疾患に伴う脳機能障害の回復は脳の可塑性によるところが多い。PET、fMRI、経頭蓋磁気刺激による検討が行われている。頭皮上から磁気刺激を与えると、上下肢筋肉で惹起される筋電図の変化を検討すると、片麻痺患者では健常半球刺激で両側に運動誘発電位を認めるとの報告が多い。

         補足運動野と運動前野

Shibasaki et al, 1993 ; Sadato et al, 1996:右利き被験者の右手の運動に関して補足運動野と運動前野が重要な役割をはたすことが示唆されている。

Sadatoら(1996):運動と反対側の運動前野の活動は運動遂行に強く関連し,運動と同側の活動は運動の複雑さに関連すると報告した。(神経進歩42:139-145. 1998)

     脳梗塞片麻痺患者の非侵襲的画像による検査

 下記に代表的な論文の要約を引用したが、麻痺側と同側の運動前野または補足運動野が賦活化されることが報告されている。

 Weillerら(1992):線条体/内包の脳梗塞による麻痺から回復した患者と健者を比較し、脳梗塞患者では回復肢の手指運動時に健常人より強く両側の島、対側下頭頂野、対側前頭野、対側前帯状回、同側運動前野、同側大脳基底核が賦活されると報告した。

 Hondaら(1997):皮質を含む脳梗塞患者では、回復肢の手指運動時に同側感覚運動野、同側運動前野の賦活を認め、電気生理学的検討から再組織化の結果であると推論した。

 中田ら(1999):fMRIを用い検討した。右利き被験者が右手掌握時には、左感覚運動領域、左体性感覚野、左内側の補足運動野、右小脳前葉中間部、虫部が賦活される。左掌握時には右感覚運動野、左小脳中間部が賦活されるが、補足運動野や体性感覚野の賦活は明らかではない。

 右利き右片麻痺患者で鏡像運動が観察されていない患者では、右手の掌握を試みた時、左感覚運動野は賦活されるが、右小脳前葉中間部は賦活されない。また、正常者では賦活されない右感覚運動野の賦活が認められる。健側の左掌握時に右補足運動野が賦活される。右利き左片麻痺患者で鏡像運動が観察されていない場合、健側である右掌握時には左感覚運動野、右補足運動野、右小脳前葉中間部が賦活される。麻痺側である左掌握時には右感覚運動野および左感覚運動野の賦活は認められるが、左小脳前葉中間部の賦活は認められない。

 皮質の再組織化出現の機序として、脳幹網様体脊髄路の関与、非交叉皮質脊髄路の動員、皮質間抑制性の解除などが想定されている。

      同側(健常側)の運動野が賦活される機序

 1. 脳幹網様体脊髄路の関与:この経路は随意運動を調節する主要な下行神経路であり、動物実験では錐体路の主要な代償経路とされている。この経路は2つあり、橋から起こる内側網様体脊髄路であり、内側縦束とともに前索を通り前角内側部に終末する。一方、延髄から起こる外側網様体脊髄路は両側性で、しかもほとんど交叉せずに脊髄側索前部を下行して前角外側に終末する。

網様体内の神経細胞には大脳皮質の広い範囲(特に体性知覚野、運動野)からの入力があることが知られており、網様体脊髄路を介して健常半球から同側性の運動を制御する能力があることが予想される。

 2. 非交叉皮質脊髄路の動員、皮質間抑制性の解除:約10~15%の皮質脊髄路は交叉しないで、前索または側索を下行し、同側の体幹運動に関与すると考えられている。この経路が片麻痺の改善に重要な役割を演じている可能性がある。この非交叉性皮質脊髄路は対側半球からの抑制が優位に働いているため、通常は機能しないと思われているが、障害により抑制から解放され随意運動のコントロールに動員されると推測されている。

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