ひょうい現象のメカニズム,火事馬の馬鹿力


          リサーチ200X:ひょうい現象のメカニズム

リサーチ200Xでひょうい現象のメカニズムについての番組があった。途中から見たので内容は少し不正確かもしれないが、下記のようなストーリーだった。

ある若い女性がこっくりさんゲームをやっていたら、いわゆる狐つきの状態となった。専門医による精密検査により下記の疾患は除外された。

脳外傷などの脳損傷、薬剤性または有害性のある毒物、精神分裂病、解離性同一性障害

澤口俊之氏がひょうい現象の脳内メカニズムについて解説していた。

暗示を与えていないのに狐の霊や女性の霊がとりついたりするのはなぜだろうか?46野(前頭前野)の機能低下がおこるために自己の人格と関連している前頭葉の10野、9野からの情報が伝達されず、記憶の整理ができなくなって自分と他人の区別ができなくなり人格交替の現象がおこる。

狐つきの女性は狐の霊がのりうつったらどうしようという不安があり、こっくりさんにのりうつった人の記憶であると判断してしまう。治療としては、こっくりさんの儀式を思いださないように休学させ、過去の記憶を思いだせたら1カ月後に正常となった。

こっくりさんをやる時と催眠状態との類似性

催眠

1。リラックス状態

脳のシナプスからのノルアドレナリンの放出が減少する。脳のセロトニンの分泌が増加し、セロトニンからアセチルセロトニンへ、そしてメラトニンの合成が増加する。メラトニンは睡眠促進物質であり、刺激がない状態では睡眠に陥る。

2。一点に注意を集中する

通常はメラトニンの分泌が高まると睡眠状態になるが、単調な刺激では睡眠直前の意識状態となる。覚醒と睡眠の中間の状態が催眠状態である。

3。暗示を与える

大脳新皮質の前頭連合野の背外側部の46野はノルアドレナリン受容体が豊富にあり、脳の最高司令部であり、ワーキング・メモリーのセンターである。五感からの情報や記憶が一時的に蓄積される部位でもあり、46野が反応すると運動野に指令が行き、筋肉の収縮が見られる。

恐怖などの強烈な情報はノルアドレナリンに最も反応し、逆に46野のオーバーヒートまたは麻痺をおこす。例えば、火事場の馬鹿力というのがあるが、通常では46野のリミッター機能により最大限出せる筋力の50%しか出せないようにコントロールされている。火事という命にかかわるような強いインパクトにより46野が麻痺してしまい、抑制がとれてしまって最大限の力が出る。狐に憑依されていると思っている女性が男性をもちあげることができるメカニズムも同じ機序が想定される。

上記の催眠を行う方法は、こっくりさんの儀式を行うのと同じであり、この場合も催眠レベルの状態となり非常に暗示にかかりやすい状態なのだ。本や雑誌で見た内容の恐怖が記憶されていて、そのときの人物と交替しがちとなると解釈される。

深い催眠にかかりやすい人は15~20%、催眠がかからない人は5~10%、中等度の催眠状態になる人は70~80%である。熱中しやすい人や10歳以下の子供が催眠状態になりやすい。また、疲労や睡眠不足でも46野の機能が低下する。

通常は暗示の言葉に対して側頭葉の聴覚野から言語野へ行き、そしてそこから46野に行き、そこで判断をして運動野の運動の指示を出すが、46野の機能が低下すると、46野を介さずに直接、言語野から運動野へ情報が伝達され、判断することなく暗示にかかり、運動を始める。

催眠の効果:催眠療法の有効性

恐怖体験は生命の危機に対する反応でノルアドレナリンの分泌が増加し、通常よりも強い記憶の神経回路ができてしまう。短期記憶には最初の2週は海馬が関与しているが、長期の記憶には海馬以外の場所が使われるが、恐怖体験の記憶の神経回路が太くなっていて、すぐに思い出してしまう。

肝だめしのような場面で恐怖体験を経験すると、そのとき大量のノルアドレナリンが分泌され、瞬時の大量の情報が46野に入るためオーバーヒートをおこし、46野の機能の麻痺がおこり、的確な判断ができなくなってしまう。

催眠状態で暗示をかける

パニック発作のメカニズムは多種の仮説があるが、ノルアドレナリン過剰説は有名だ。エレベーターの中に数時間閉じこめられたときの記憶が急によみがえってパニック症状がおこる。恐怖体験の記憶は消えないが、催眠状態で患者を安心させるような過去に経験した話を思いださせることにより、この記憶のネットワークを太くすることによってパニック発作は予防される。

参考文献:澤口俊之著:「私」は脳のどこにいるのか(筑摩書房)

前頭連合野である46野は入力系(感覚系)でも出力系(運動系)でも最高レベルに位置しており、統合系の代表的な領野である。この領野はワーキング・メモリーという高度な認知機能に関係する。ワーキング・メモリーは、一般的には「行動や決断に必要な情報を一時的に保持し操作し、行動や決断を導く認知機能」といってよく、思考や言語などの精神活動のベースになっている。

前頭連合野はさまざまな高次感覚領野群(側頭連合野や頭頂連合野)から入力を受けると同時に高次な運動性皮質である運動連合野や皮質下の運動性の構造(大脳基底核など)を制御する。前頭連合野の基本的な役割は、高次感覚領野からの入力、すなわち知覚や記憶にもとづいて行動の計画・プログラムを組立て、運動連合野や運動性の皮質下構造の活動を制御する。情動にかかわる部位(辺縁系など)にも前頭連合野は出力しており、これらの構造も制御できる。また、脳の覚醒系(青斑核のノルアドレナリン性ニューロン群から大脳へ広く投射しているノルアドレナリン系や、縫線核のセロトニン性ニューロン群からのセロトニン系など)にも出力を送っている。覚醒や注意あるいは集中のレベルを前頭連合野は制御できる。入力は前頭連合野が受けるのは高次感覚野からだけではない。体の内部状態や情動に関する入力を前頭連合野は受ける。

前頭連合野がヒトの進化過程で最も豊かに発達してきた脳領域であり、チンパンジーとヒトの大脳皮質を比べると、第一次感覚野や運動野の広さはほとんど同じだが、前頭連合野は三倍もヒトの方が広く発達している。

http://www.ntv.co.jp/FERC/research/

http://sasapanda.net/ (Orbium-そらのたま-)

http://blog.with2.net/link.php/36571(他の面白いブログを見てください)

 

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