池谷裕二先生、「進化しすぎた脳」、ウェルニッケ失語、論争


       池谷裕二先生、「進化しすぎた脳」、ウェルニッケ失語、論争

池谷裕二先生のHPの掲示板に、批判のコメントを書いてしまったが、その経過を書いておくことにした。

失語症についての簡単な説明:下記のブログから引用

http://www.doblog.com/weblog/myblog/40454/

http://www.doblog.com/weblog/myblog/40454/1012555

「[運動性言語野:ブローカ野]

フランスの医師ブローカが1861年に扱った症例(Tanの症例)により発見された言語野。みんなから「Tan」と呼ばれていた男性患者は、『相手の話している内容を理解できるが、話すことができない』状態でした。その患者の死後、ブローカが左図の青い部分に脳梗塞をみつけ、この部位の機能が「ことばを話す能力」であると発表しました。

[感覚性言語野:ウェルニッケ野]

ポーランド生まれのドイツの医師ウェルニッケが1874年に扱った症例により発見された言語野。『相手の話している内容を理解できないが、話すことはできる』状態である患者の脳を解剖し、上図の赤い部位が「ことばを理解する能力」と関係があると発表しました。

ブローカ野に病巣や障害があると、「運動性失語症(ブローカ失語)」と言い、次のような症状を示します。

* ことばの理解はおおむねよいものの、実際に話すことは少なくなる

* 話された内容はぎこちないものである

* 書字障害の程度はさまざまであるが、漢字より仮名の書字障害が顕著である

一方、「感覚性失語症(ウェルニッケ失語)」は次のような症状を示します。

* ことばの理解はあまりよくないものの、実際に話す量は多い

* 話された内容はとても流ちょうである

* 書字障害は顕著である」(引用終了)

「進化しすぎた脳」池谷裕二(朝日出版社)

かなり以前に買った本であるが、つんどく状態だった。神経内科医にとって、簡単なところから読み始めた。そうしたら、とんでもない間違った記述がされていることを発見した。下記の項目であるが、きちんとした勉強をしてこなかったのではないだろうか?彼のHPの掲示板に、その旨を書いておくことにした。

池谷裕二様:

神経内科の専門医です。「進化しすぎた脳」の本の中で、初歩的な間違いを発見してしまいました。あなたの知的バッグランドがこの程度のものなのかと、愕然としました。このオープンな掲示板に注意を喚起します。

2-10 「ウェルニッケ失語症」

「この患者は本当に気の毒で、「何を飲みたい?」と訊いても答えられないんだ。「何を飲む」という問いに答えるためには抽象的なことを考えなくてはいけない。でも、そのかわり、「水を飲みたいですか」とか「ジュース飲みたいですか」というふうに具体的に訊けばきちんと答えられる。もしくは、患者を冷蔵庫につれていって、扉を開けて「どれを飲みたいかを選んでください」というとやはり選べる。これも具体的な質問だよね。見えるものから選ぶわけだから。」(引用終了)

ウェルニッケ失語は、感覚性失語とも言い、言葉の意味がわからないための失語です。

“「水を飲みたいですか」とか「ジュース飲みたいですか」というふうに具体的に訊けばきちんと答えられる。”ということは、ありえません。神経内科の教科書を読んでください。

以下は、池谷裕二先生のHPの掲示板より引用しました。

Re:[97] ウェルニッケ失語症の解釈の間違い 投稿者:はし 投稿日:2006/04/30(Sun) 23:14

初めまして。京都で神経内科医をしています。以前からご著書を楽しく拝読させていただいております。 前の方の書き込みを見て書き込んでおります。たしかにウェルニッケ失語症は感覚失語が主症状で、話された言葉や書かれた言葉が理解しにくくなります。しかし、よほどひどくなければ、まったく理解できないわけではありません。ご著書でとりあげられた症例は十分にありえる話です。臨床では教科書通りの患者に出会うことはほとんどありません。この方はまだ臨床経験の浅い方ではないでしょうか。最近は紋切りガリ勉型の若医者が増えてきていまして、未来の医療を憂れえております。この書き込みは単に自己宣伝のためではないでしょうか。

Re:[98] [97] ウェルニッケ失語症の解釈の間違い投稿者:がや 投稿日:2006/05/01(Mon) 09:37

ご専門の方々の書き込みありがとうございます。

少々困惑しておりますが、拙著で取り上げましたものは“実例”であります(おそらく読者の皆さんはそれが誰なのか人物も特定できるかと存じます)。つまり問題は「ウェルニッケ失語症」の定義の“範囲”にあるように感じました。

私は失語症の専門ではありませんので、どちらのご意見が正しいのかまったく判断はできませんが、このように皆様にご迷惑おかけるすような不用意な発言が拙著に含まれていましたことを深くお詫びしたいと思います。(引用終了)

5月3日

池谷裕二様、およびはし様:

 ご返事ありがとうございました。ぼくの書き込みが消去されてしまうのではないかと思っていましたが、さすが、一流の研究者だと感心しました。ぼくも、アメリカ(University of Pennsylvania(1980-1983)oligodendrogliaの培養をもっぱらやっていました)に留学した経験があります。海外の学会発表でのすさまじい質問攻めには当初はカルチャーショックを受けました。アメリカから帰国後は、自分自身が質問魔になっていまい、その点では悪評を買っているかもしれません。

 著書で紹介された内容が実例であったとのことでした(読解力不足でした)ので、再度コメントをさせていただきます。

物理学者の示す症状(言葉が理解できる)は、私にとっては、驚きでした。

このような患者を経験したことがありませんので、最初の無礼なコメントになってしまったことをお詫び申し上げます。

ウェルニッケ失語を呈する場合、ほとんどが脳梗塞の場合が多いと思います。

急性期には、まったく言葉による言語理解ができなかったのではないでしょうか。リハビリを行うなどことによる脳の代償機能の賦活化など、また未知の再生メカニズムにより、少し症状の改善が見られたのでしょう。

「聴理解の障害

どんなに重篤な聴理解が障害されていても、言語的および情動的イントネーションや相手の表情、その場の状況などを読み取る能力は保たれており、複雑な内容も意外と理解してしまうこともある」(「脳卒中と神経心理学」(平山惠三、田川皓一編、医学書院より引用))

なお、私は若者ではありません。池谷先生より20歳年上です。大学での研究生活が長かったため、臨床経験は不十分だと思っています。現在の病院に赴任してから、5年間が経過しました。脳梗塞患者の入院は年間250人程度であり、失語症を呈する患者は入院1-2ヶ月以内に、リハビリ専門病院に転院になります。したがって、回復期の患者がどのような言語機能を示すか、具体的の経験したことがほとんどないのが現状です。

 臨床のモットーは、「患者から学ぶ」です。診断に苦慮する患者を経験することがあります。そのようなときには、PubMedが頼りです。現在、神経内科部長という立場ですが、先月は私の受け持ち患者数が最高18人もいました。文献を読む余裕がありません。学会、研究会で新しい情報を仕入れて、脳をアップデート化しています。来週は、日本神経学会が東京であります。会長の東京女子医大の岩田誠教授に今回のことを伺ってみようと思います。

http://gaya.jp/ikegaya.htm (池谷裕二先生のホームページ)

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