自己学習型ロボット:川人光男先生の挑戦


自己学習型ロボット:川人光男先生の挑戦

中日新聞(2007110日)文化欄(美の流儀5)を読んで

 

僕が神経内科医になったころ、神経生理学の日本の権威は東大の伊藤正男教授であった。小脳の生理学で世界的にも有名であったが、学会や研究会などの特別講演などで、何度か講義を聞いたが、物理学が苦手の僕には理解が困難であった。小脳は運動のバランスを調整する機能を持っているが、その神経細胞には何種類かがあり、互いに結合している。その機能について、明快な理解はできていなかった。東大物理学部卒業の神経科学者の川人光男先生が小脳の機能を解明したのである。小脳は入力を出力に変換する神経ネットワークであるが、視覚情報を学習してすばやく運動をおこすモデルがあることを彼が理論的に数式で証明し、それを裏付ける実験結果が出た。1996年この理論を応用して、ヒトの動作をまねる自己学習型ロボットが始めて誕生した。これに関してのビデオが下記のリンクで見ることができるが、ここまで進歩していたことに驚き、小脳についてのもやもやしたものが、頭の中がすっきりした。

 

 中日新聞での記事のなかで、彼が次のようなコメントを述べていた。茂木健一郎氏などのことを暗に批判しているのであろう。

 

「僕らの研究で社会に役立つことはたくさんあると思う。それを世の中の人が期待してくれるのはうれしい。でも、この風潮に乗って、脳が専門でない人や、他の科学者から引用される論文一つ書いたことがない人が専門家然として脳について語ったり、科学的な業績がある人までもが、科学的な根拠がはっきりしない事をあたかも科学で確立された真実であるかのように宣伝したりするのは非常に問題です。いいかげんな人物を野放しにしているのは脳科学自体がいいかげんだから、ということになれば、この分野全体に傷がついてしまう。」

 

 また、次のようなコメントもあり、まったくそのとおりだと思う。

「ゲノムやがん研究などを含む生命科学分野に対し、国が支出する競争的な研究予算は年三千五百億円ですが、脳科学に振り分けられるのは、七十億円だけ。米国が四兆円のうち九千五百億円を振り分けているのとは雲泥の差です。日本では景気が悪化して以降、政治家や官僚が「すぐに役立つ研究を」と言い始めた。現場が気持ちよく研究できる環境を作るのが行政の役割のはずなのに、今は上に振り回され、むしろ成果が上がらなくなっている。この状況は必ずしっぺ返しがくる。」

 

http://blog.with2.net/link.php/36571(ブログランキングに投票をお願いします)

http://www.jst.go.jp/erato/project/kgd_P/kgd_P-j.html (川人学習動態脳プロジェクト)

http://www.jst.go.jp/erato/video/1996.htm(脳を創り、脳を知る)

http://www.jst.go.jp/pr/info/info23/jryakureki.html (川人光男先生の履歴書)

http://www.okayama-u.ac.jp/user/hasep/yh-seminar/2003b/Tada_31002.htm (「見まね」ロボットは言語を獲得できるかロボットは「脳進化」の夢をみるか)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E7%AE%97%E8%AB%96%E7%9A%84%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%A7%91%E5%AD%A6 (計算論的神経科学)

http://www.ics.kyoto-su.ac.jp/~fujii/JHomePage6/Doya.html (行動の学習と制御のモデル)

http://d.hatena.ne.jp/deepbluedragon/20060503/p1 (蒼龍のタワゴト評論、哲学、認知科学

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