卵巣奇形腫に合併した抗NMDA受容体脳炎

     卵巣奇形腫に合併した非ヘルペス性辺縁系脳炎

 

2005年Dalmauらのグループは、精神症状、けいれん、記憶障害、遷延性意識障害、中枢性低換気を特徴とする脳炎を発症し、卵巣奇形腫を合併した9例の臨床所見と血液、髄液に新規の抗神経抗体が存在することを報告した。(Vitaliani R. et al: Paraneoplastic encephalitis, psychiatric symptoms, and hypoventilation in ovarian teratoma. Ann Neurol 58: 594-604, 2005)

2007年彼らは抗体が認識している抗原は神経細胞膜上に発現したNMDAR NRl/NR2 heteromerからなるepitopeであり、卵巣奇形腫関連傍腫瘍性抗NMDAR脳炎として、12例を報告した。(Dalmau J. et al: Paraneoplastic anti-N-methyl-D-Aspartate receptor encephalitis associated with ovarian teratoma. Ann Neurol 61: 25-36, 2007)さらに、彼らは100例の抗NMDAR脳炎の臨床的研究と抗体の効果について検討した。(Dalmau J et al: Anti-NMDA-receptor encephalitis: case series and analysis of the effects of antibodies. Lancet Neurol. 7: 1091-1098, 2008) 100例の患者の臨床症状、検査所見、予後などについて、まとめて記載した。

 

NMDA受容体脳炎の臨床

性別、年齢: 91例女性、平均年齢23歳(5歳―76歳)。

前駆症状(入院2週以内):86例頭痛、微熱、非特異的なウイルス様疾患。

著明な精神症状:77例不安、興奮、奇異な行動、妄想的、パラノイア的思考、幻視、幻聴など。

短期記憶喪失、けいれん、精神症状の合併:23例。

けいれん:76例(全般性強直性間代性45例、部分複雑発作10例、その他30例)

カタトニア様状態:88例が進展し、意識の低下、無動と興奮が交互におこる時期があり、刺激に対して減弱、または矛盾した反応(疼痛には反応しないが、開眼に抵抗する)。

ジスキネジア、自律神経の不安定性、中枢性低換気:52例

ジスキネジア:86例;口顔面ジスキネジア(55例)が最も多く、しかめ面、咀嚼様運動、激しい顎の開閉運動を呈し、口唇、舌、歯の損傷を起こした。

自律神経の不安定性:69例:37例不整脈(16例頻脈、7例徐脈、7例心拍停止延長、4例がペースメーカー)。36例体温異常(27例高熱、3例低体温、6例

両者)、21例血圧不安定(12例高血圧、3例低血圧、6例両者)20例多汗、18例唾液分泌過多、6例過呼吸、4例麻痺性イレウス。

中枢性低換気:66例;換気補助は平均8週(2-40週)。27例が上記3症状の2つを有し、14例が1つの症状を有した。7例はけいれんと軽度な精神症状のみ。

運動異常:47例;四肢、腹部、骨盤のchoreoathetoid, complex movement、47例異常姿勢、筋強剛、9例ミオクローヌス、8例異常眼球運動、5例振戦、3例バリズム。

抗NMDAR脳炎の検査所見

脳波:92例中77%が全般的、前頭側頭部に主にてんかん波を伴わないδ ~θ波。

MRI:100例中55例MRI FLAIRまたはT2画像で高信号域。14例大脳皮質、髄膜、大脳基底核に軽微なまたは一過性の造影増強。19例脳の単一部位(16例が内側側頭葉、2例が脳梁、1例が脳幹)に限局。

髄液:95例異常;91例リンパ球増加、32例蛋白増加、26例オリゴクローナルバンド陽性。

脳生検:14例中2例正常、12例軽度の血管周囲性のリンパ球浸潤、10例ミクログリアの活性化が見られ、神経食性結節やウイルス検査は陰性。

新生物:98例中58例(59%)。2例が腫瘍検査前に死亡。1例を除いてすべての患者は腫瘍診断前に神経症状を発症(平均8週;1-380週)。6例で脳炎の回復後に腫瘍の診断(56-380月)。35例成熟型、14例未熟型。男:1例精巣未熟奇形腫、1例小細胞肺癌。

卵巣奇形腫:CT,MRI、超音波で同定された卵巣奇形腫は通常の腫瘍型(平均6cm、1-22cm)。8例両側の奇形腫(4例同時期、2例脳炎再発前に反対側の奇形腫の既往)。すべての奇形腫は神経組織を含み、25例NMDAR検査すべて陽性。

19歳未満の患者:1人男児(11歳、腫瘍はなし)、21例の女性と女児(平均15歳、5-18歳)。12例卵巣奇形腫(5例が未熟型特徴)、9例腫瘍はなし。精神未熟奇形腫の1例のみで転移が確認。

抗NMDAR脳炎の治療、合併症、予後

治療:51例腫瘍摘出、92例免疫療法;76例副腎皮質ホルモン、62例IVIg、34例血漿交換、10例rituximab、9例cyclophosphamide、1例azathioprine。 

予後:47例完全回復。28例安定的軽度障害。18例重篤な障害。7例神経障害の結果、死亡(平均17か月(1-194月)の経過観察期間)。

予後を左右する要因:腫瘍が同定され、神経障害の発症4か月以内に摘出された患者は他の患者と比べてより良好な結果を示した。症状発現から最初の改善徴候の平均期間は早期に腫瘍の治療した患者群で8週(2-24週)、腫瘍が遅く治療されたか、未治療群では11週(2-50週)、腫瘍がない群では10週であった。

入院中の合併症:7例血清CKの高値、6例肺塞栓、6例一過性失語、4例不全片麻痺、4例四肢麻痺。

前頭葉機能不全徴候:退院後、軽度の障害または完全回復した75例中64例(85%)が注意や計画性の貧弱さ、衝動性、行動学的脱抑制などの前頭葉機能不全徴候を呈した(20例(27%)が過眠症、睡眠パターンの逆転などの重篤な睡眠障害)。

脳炎の再発:5例脳炎が1-3回再発。初発症状と最近の再発の平均期間は18か月(1-84ヶ月)。腫瘍早期摘出患者(36例中1例)では、他の患者(64例中14例;遅延して腫瘍の治療が行われた患者(22例中6例)や腫瘍がない患者(42例中8例))に比べて再発は少なかった。

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神経内科専門医 neurologist
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