アルツハイマー型認知症の診断と治療


       アルツハイマー型認知症の診断と治療

 

                           認知症とは?

 

認知症とは、いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害(記憶障害、実行機能障害、失認など)があるために、社会生活に支障をきたすようになった状態と定義される。認知障害の中でも記憶障害が中心となる症状で、早期に出現することが多い。

 認知症と区別すべき病態として、意識障害・せん妄、加齢による認知機能の低下、うつ状態による仮性認知症などがある。

 加齢による物忘れでは、日常生活の支障がなく、見当識障害はなく、ヒントを与えられると思いだせる、物忘れに対して自覚があるなどの特徴がある。

 

            

                           認知機能検査   

 

認知機能検査として、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)や、Mini-Mental State ExaminationMMSE)などのスクリーニング検査が用いられる。外来診療ではHDS-R検査が簡便であり、カットオフポイントは20/21である。単語の遅延再生が認知症の早期に障害され、HDS-Rが正常範囲のこともあり、確定診断には脳血流シンチ検査を行っている。

 

                         認知症を呈する疾患の鑑別

 

脳血管障害:脳血管障害発症と認知症発現に時間的関連がある。脳血管性病変が認知症の責任病巣となりえる部位に相応の大きさと広

 がりをもつ。

神経変性疾患:レビー小体型認知症(パーキンソン病症状、幻視、認知機能の日内・日間変動など)、ピック病(人格変化、情緒障害、反社会的行動)など

特発性正常圧水頭症:歩行障害や尿失禁。特徴的な脳MRI所見(顕著な脳室の拡大、高位円蓋部の脳溝の狭小化、シルビ

 ウス裂の拡大など)

感染症:脳炎、エイズ脳症、プリオン病(亜急性の認知症)、PML,神経梅毒など

外傷:慢性硬膜下血腫(発症数カ月前の転倒による頭部外傷の既往)

内分泌障害:甲状腺機能低下症

中毒、栄養障害:アルコール中毒、ビタミンB1B12欠乏症など

 

          アルツハイマー型認知症の特徴

 

多くは記憶障害で発症し、緩徐進行性の経過をたどる。初期から中期にかけてはとくに女性では、主介護者に対して「財布や通帳を盗まれた」などの物盗られ妄想を呈する割合が高い。「今日は何日ですか」:この年になったら日にちは関係ないから、今日は新聞見てこなかったから、「今の総理大臣の名前は」:急に言われても、普段はわかっているのにこんなときはあかん、頭に浮かんでいるのにでてけえへん、などの「取り繕い」反応が見られる。

 

       ドネペジルによる治療

 

アルツハイマー型認知症治療薬として、アセチルコリン分解酵素阻害薬であるドネペジルを投与する。3mgから開始し、腹痛、下痢などの副作用がなければ、5mgに増量する。ドネペジルは海馬萎縮抑制効果があることが報告されている。

高度アルツハイマー型認知症に対してはドネペジル10mgの投与を行う。FASTFunctional Assessment Staging)があり、認知症の進行を日常生活の活動における障害の面からとらえたものである。FASTは7段階で構成され、段階12は正常範囲のもので, 段階37が病的状態に相当する。FASTによる高度認知症とは、6と7に相当する。重ね着などの不適切な着衣や自発的に入浴したがらないなどの症状が出現すれば、ドネペジル10mg投与を開始する。

 

                                    FAST分類

 

1.認知機能の障害なし

2.非常に軽度の認知機能の低下:物の置き忘れを訴える。喚語困難。

3.軽度の認知機能の低下:熟練を要する仕事の場面で機能低下が同僚により認められる。新しい場所に旅行することが困難。

4.中等度の認知機能の低下:夕食に客を招く段取りをつけたり,家計を管理したり,買物をしたりする程度の複雑な仕事でも支障をきたす。

5.やや高度の認知機能の低下:介助なしで適切に洋服を選んで着ることができない。入浴させるとき何度もなだめすかして説得することが必要なことがある。

6.高度の認知機能の低下

6-a 不適切な着衣:着衣失行が見られる。

6-b 入浴に介助:湯の温度調節ができない、身体を洗うのが下手になる。

6-c トイレの水を流せない、きちんと拭くことができない。

6-d 尿失禁

6-e  便失禁

7.非常に高度の認知機能の低下

7-a  最大限約6語に限定された言語機能の低下。

7-b  理解し得る語彙はただ一つの単語となる。

7-c  歩行能力の喪失

7-d  着座能力の喪失

7-e  笑う能力の喪失

7-f  昏迷および昏睡

 

       進行した高度アルツハイマー型認知症患者へのドネペジル投与の考え方

 

中村祐教授は次のように述べている。

 

1.可能であれば通院できる限り投与する。

2.入所した後も効果は期待できる。

3.寝たきりになると、誤嚥の恐れがあるので中止を検討する。

4.心ブロックなどの症状が出現すれば、減量ないし中止を検討する。

 

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神経内科専門医 neurologist
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