心原性脳塞栓の予防 ―rt-PA使用症例の心原性脳塞栓の現状―


          心原性脳塞栓の予防 ―rt-PA使用症例の心原性脳塞栓の現状―

 

脳梗塞のうち、心原性脳塞栓は梗塞サイズが大きくなり、重篤な結果となりやすいことが知られている。我が国では2005年に発症3時間以内にrt-PA静注療法が承認された。当院でrt-PA静注療法が使用された脳梗塞患者が、2009年に著明に増加した。その理由は75歳以上の慎重投与例にも積極的に治療を行っていること、日勤帯での救急外来での急性期脳梗塞患者の対応を迅速に行っていることによると推定された。

 

1. 20091月~8rt-PA投与24例(そのうち75歳以上8例)
  1月 2 (67歳男、70歳男)
  2月 2例(65歳女、70歳女)

  3月 3例(74歳女、72歳女、83歳女)
  4月 4例(82歳男、81歳女、62歳男、64歳男)
  5月 3例(63歳男、76歳男、58歳女)
  6月 1例(70歳男)
  7月 2例(79歳男、59歳女)
  8月 7例(44歳男、80歳女、64歳男、82歳女、60歳男、82歳女、60歳男)

 

2. 病型別患者数

心原性脳塞栓           19
   心房細動            8
   発作性心房細動             4
   その他の原因             7
    心臓カテーテル後        1
    心臓粘液腫          1
    その他           5
 
アテローム血栓性脳梗塞        5


3.
心房細動(AF) 8例の予後
 死亡    1(80歳女) ICA, MCA, ACA閉塞、脳ヘルニア、AF未治療 

重度障害 1( 70歳男) ICA, MCA, ACA閉塞、脳ヘルニア、AF治療、warfarin(WF)

control不良
 やや改善 2
      1(76歳男) MCA閉塞、脳ヘルニアは治療により改善、AF未治療  

1(64歳女) MCA, PCA閉塞, AF治療;WF control不良
 改善   4
         1(60歳男) ACA閉塞、AF未治療

1(82歳女) MCA閉塞、AF未治療
         1(82歳男) M1閉塞、AF, WF加療中、PT-INR 1.56   

1(72歳女) MCA領域

 

4. 発作性心房細動4例の予後
死亡     1(58歳女) ICA閉塞、出血性梗塞、脳ヘルニア、WF control不良
軽度改善 2
         1(70歳女) ACA閉塞

1(63歳男) 左視床
著明改善 1(70歳男) MCA閉塞

 

5. アテローム血栓性脳梗塞5例の予後
死亡     1(60歳男) BA閉塞

軽度改善 2
       1(59歳男) MCA閉塞        

1(64歳女) MCA領域
改善 2
        1(81歳女) 左放線冠
        1(83歳女) 左視床  

 

死亡例は内頸動脈や脳底動脈閉塞患者であり、rt-PAの有効性が低いと報告されている一群であった。そこで、脳梗塞の予防、特に心原性脳塞栓の予防が重要となる。心房細動の治療、抗凝固薬であるwarfarinの適正投与が非常に重要なポイントとなる。

 

200811月に心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)が発表された。非弁膜症性心房細動における中等度のリスク評価にCHADS2スコアが採用された。脳梗塞発症のリスクが集積すると脳梗塞の発症率が上昇する。Congestive heart failureHypertensionAge 75 歳,Diabetes Mellitus, Stroke/TIAの頭文字をとって命名されたスコアで,前4つの項目には1点を,脳梗塞発症リスクの高いStroke/TIAの既往には2点を付与し,合算して算出する (1)。点数が高いほど脳梗塞発症のリスクが高くなる。(表22点以上のリスクに該当する場合は,ワルファリン療法をすすめ,1点の場合は,同療法を考慮してよいと記された。

 

1CHADS2スコア

C: Congestive heart failure   1

H: Hypertension        1

A: Age 75歳以上         1

D: Diabetes mellitus      1

S2: Stroke/TIA         2

 

2CHADS2スコアと脳梗塞年間発症率

CHADS2スコア  脳梗塞年間発症率(95%信頼区間)

0               1.9 (1.2 – 3.0)

1               2.8 (2.0 – 3.8)

2               4.0 (3.1 – 5.1)

3               5.9 (4.6 – 7.3)

4               8.5 (6.3 – 11.1)

5              12.5 (8.2 – 17.5)       

6              18.2 (10.5 – 27.4)

CHADS2スコア1 warfarinを適用した場合、脳梗塞年間発症率2.8%が、warfarinによりRisk Reduction64%、コントロールが良ければ90%となる。脳梗塞年間軽減率 1.7 – 2.5% (心原性脳塞栓の減少が主)で、年間大出血は1.2%(頭蓋内出血 0.6%)である。一方、CHADS2スコア1 aspirinを適用した場合、aspirinによるRisk Reduction21%以下であり、日本人における有効性は証明されていない。脳梗塞年間軽減率 0.6% 以下(非心原性脳塞栓の減少が主)で、年間大出血は0.8%であり、aspirinを使用する意義に乏しい。

Japan Atrial Fibrillation Stroke TrialJAST研究))

 

PT-INRと事象発生率

 PT-INR1.62.6の範囲になるように、warfarinの量を調節する。PT-INR1.59以下では、重症虚血の発症率が増加する。また、PT-INR2.60以上では、重症出血の発症率が増加する。外来患者ではwarfarin1~2 mgから開始する。

 

追記:先日、ある小さな研究会で脳卒中治療ガイドライン2009についての講演があった。演者はある著名な先生であったが、心房細動の治療薬として、アスピリンの選択肢を示す表を出されていた。2006年のガイドラインであり、失礼を省みず、2008年の日本の心房細動治療ガイドラインではアスピリンは削除されていますとコメントした。意見交換会で失礼をおわびした。彼の部下がアメリカに留学していた時に僕も同じ大学に留学していた。

 

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