BNPは心原性脳塞栓の生物学的マーカーである


神経内科抄読会 201048日  

 

Plasma brain natriuretic peptide can be a biological marker to distinguish cardioembolic stroke from other stroke types in acute ischemic stroke

Shibazaki K. Kimura K et al. Internal Medicine 48:259-264, 2009

 

抄録

背景:plasma BNPはうっ血性心不全のマーカーとして使用されている。さらにBNPレベルは急性虚血性脳卒中、とくに心原性脳塞栓で増加している。特異的な脳卒中の亜型、とくに心原性と他の虚血性脳梗塞を鑑別する生物学的マーカーとして使用できるかを検討した。

方法:連続症例(200人、124例男、76例女、平均年齢71.4歳)、発症24時間以内の脳梗塞を前方的に組み入れた。入院時のplasma BNPを測定した。TOAST分類により4つのグループに分けた:large vessel disease (LVD), cardioembolism (CE), small-vessel disease (SVD)と他の脳梗塞。Plasma BNPレベルと脳梗塞の亜型との関連を調べた。

結果:CE:41%、他の脳梗塞34%、SVD 16%、LVD9%であった。年齢、女性、AF, 入院時のNIHSSスコア7点以上、退院時mRSスコア3以上が他の脳梗塞のサブタイプに比べてCEでは有意に高かった。CE群の平均plasma BNPレベルは他の3群より、有意に高値であった(CE; 409.6 pg/mL, LVD; 94.0 pg/mL, SVD; 他の脳梗塞;37.4 pg/mL, 156.9 pg/mL)。CEと他の脳梗塞サブタイプを鑑別するplasma BNPレベルの最適なカットオフ濃度、感受性、特異性はそれぞれ、140.0 pg/mL, 80.5%, 80.5%であった。

結論:plasma BNPレベルは他の脳梗塞サブタイプに比べて、CE患者では有意に高かった。

急性脳梗塞患者でのplasma BNPレベルが140.0 pg/mL以上の場合は、内科医はCEを強く考慮すべきである。

 

BNP32のアミノ酸ペプチドであり、17のアミノ酸リング構造を有し、1988年ブタ脳から分離され、血管拡張作用を有する利尿性因子である。BNPは主として心室筋から分泌される。最近では、BNPはうっ血性心不全患者の評価に有用であることが報告されている。

 

さらに、plasma BNPレベルがとくにAFを有する急性虚血性脳卒中患者で増加していることが報告されている。脳梗塞のサブタイプを鑑別することが予後、アウトカム、治療戦略の立案、再発予防や管理がサブタイプにより異なるため、重要である。現在、入院後の早期のサブタイプの精確な決定にはMRI, MRA, ECG,経胸壁心エコーを必要とする。採血でサブタイプを予測できる方法の開発は他の方法より優っている。D-dimerや高感度CRPの測定がサブタイプの鑑別に検討されたが、診断的精確性は低い。

対象と方法:

 本文を参照

結果:

Table 1を参照

考察:

 CEBNPが高い理由

1.発症前にすでにうっ血性心不全に罹患していた

うっ血性心不全では、脳梗塞のリスクが23倍高い。

心不全患者の脳梗塞の機序として、止血、血液構成成分の異常や血管内皮の異常が考え

られている。BNPレベルが、本研究ではCTRと相関した。

2.脳梗塞による神経内分泌変化が心室への負荷を増大し、発症後にうっ血性心不全が発

生するかもしれない。

3BNPAF患者で増加していることが報告されている。CE患者の大多数の塞栓源は

本研究では慢性、発作性AFであった。

 

 本研究では、非‐CE患者の19.4%(23例)が140.0 pg/mL以上のBNPレベルを呈

した。23例中、2例がAF, 5例が透析依存性の慢性腎不全、2例が肥厚性心筋症、3

が過去に虚血性心疾患、1例が肺塞栓を伴う潜因性脳梗塞、1例がたこつぼ心筋症を有し

ていた。いくつかの報告によると、多因子(透析依存性慢性腎不全、肥厚性心筋症、肺

梗塞、たこつぼ心筋症)がBNP増加と関連しているとした。23例中、残り9例で発作

AFを見逃したかもしれない。

 

年齢、性、貧血などのいくつかの因子がBNP増加と関連していることが知られている。

これは本研究と一致している。本研究では高齢、女性、貧血が他のサブタイプよりも

CE患者で多く見られた。したがって、これらの因子がCE患者のBNPレベルの高値に

影響した可能性が推定された。

 

 BNPを利用した脳梗塞サブタイプ診断のアルゴリズムを提唱する。

第1に、脳CTまたはMRISVDを検出するに用いる。SVDがない場合には、plasma

BNPレベルを測定し、140.0 pg/mLを超えた場合には、CEが強く疑われる。心臓疾患

や発作性AFなどの不整脈を心エコーや24時間Holter ECGで検索すべきである。

Plasma BNPレベルが低値の非‐SVD患者は頸動脈エコーやMRA, CT angiography

動脈疾患の存在を評価すべきである。

 

 本研究の問題点

1.CEの大部分の塞栓源は慢性、発作性AFであり、他の心臓疾患の数が少なかった。

しかしながら、日本ではAFCEのもっとも頻繁に見られる塞栓源である。

269例中17例(24.6%)の“他の脳梗塞”サブタイプはBNPレベルが140.0 pg/mL

を示した。このカテゴリーは脳梗塞の2つ以上の潜在的原因を有する患者である。した

がって、心臓原性塞栓と他の原因をともに有する患者は“他の脳梗塞”サブタイプに分

類されて、BNP高値になっている可能性がある。もちろん、BNP値が140.0 pg/mL

上の場合は心臓疾患の詳細な検索を始めるべきである。結論としては、plasma BNP

ベルはCEとほかの脳梗塞を鑑別するのに有益なバイオマーカーであるべきである。

 

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