プロトンポンプ阻害剤の副作用:低マグネシウム血症

プロトンポンプ阻害剤の副作用:低マグネシウム血症

当院で低カリウム血症を呈した2症例のヒヤリハットカンファレンスが行われた。

低カリウム血症の原因は長期に服用していた、PPI(proton pump inhibitor)の副作用によるものであった。PPI長期投与により腸管からのマグネシウム吸収が抑制され、低マグネシウム血症が発生し、二次的に低カリウム血症を来したと推定された。PPIの中止が必要で、マグネシウムを投与しても改善しない。

脳梗塞後遺症患者では胃潰瘍の再発予防にPPIを服用している患者が多いので、今後、マグネシウムの測定を定期的に実施する必要がある。6か月以上の長期に服用している患者は要注意である。

http://www.jseptic.com/journal/21.pdf#search=’%E4%BD%8E%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E8%A1%80%E7%97%87+PPI

(慈恵ICU勉強会)

http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly9/07110331.pdf

Vol.9(2011) No.07(03/31)R03

【 米FDA 】

• プロトンポンプ阻害薬(PPI):長期服用による低マグネシウム血症との関連

Low magnesium levels can be associated with long-term use of Proton Pump Inhibitor drugs (PPIs)

Drug Safety Communication

通知日:2011/03/02

http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm245011.htm

(抜粋)

FDAは,プロトンポンプ阻害薬(PPI)処方箋薬の長期服用(ほとんどの場合1年以上)が,血清中マグネシウム濃度低下(低マグネシウム血症)を引き起こす可能性があることについて,一般に通知する*1。レビューした症例の約4分の1では,マグネシウム補充のみでは低マグネシウム血症が改善せず,PPIの服用中止が必要となった。

PPIには胃酸の量を減少させる作用があり,胃食道逆流性疾患(GERD),胃や小腸の潰瘍,食道の炎症といった症状の治療に使用されている。2009年に米国では,約2,100万人の患者が外来薬局でPPI処方の調剤を受けた。PPI処方箋薬を服用する患者の平均服用期間は約180日(6カ月)である。

PPI処方箋薬には,esomeprazole magnesium[‘Nexium’],dexlansoprazole[‘Dexilant’],omeprazole[‘Prilosec’],omeprazole/炭酸水素ナトリウム合剤[‘Zegerid’],lansoprazole[‘Prevacid’],pantoprazole sodium[‘Protonix’],rabeprazole sodium[‘AcipHex’]等がある。また,[‘Vimovo’]はPPIを含有する合剤(esomeprazole magnesium/naproxen)の処方箋薬である。PPIのOTC薬には,omeprazole[‘Prilosec OTC’],omeprazole/炭酸水素ナトリウム合剤[‘Zegerid OTC’],lansoprazole[‘Prevacid 24HR’]等がある。

PPI処方箋薬とは異なり,PPIのOTC薬は低用量で市販されており,その用法は1回14日間を年3回以下に限定している。FDAは,PPIのOTC薬は添付文書の指示にしたがって服用すれば,低マグネシウム血症のリスクはほとんどないと考えている。

血清中マグネシウム濃度の低下は,筋痙縮(テタニー),不規則な心拍(不整脈),痙攣等の重篤な有害事象に至ることがある。ただし,これらの症状が患者に必ず見られる訳ではない。低マグネシウム血症の治療には,一般にマグネシウム補充が必要となる。PPIを服用中の患者が低マグネシウム血症を起こした場合の治療には,PPIの服用中止も必要となることがある。

医療従事者は,PPIを長期服用することが予測される患者,およびPPIをdigoxin,利尿薬または低マグネシウム血症を引き起こす可能性がある薬剤と併用する患者では,PPI処方箋薬による治療を開始する前に,血清中マグネシウム濃度の測定を検討すべきである。強心薬のdigoxinを使用中の患者では,マグネシウム濃度低下により重篤な副作用が起こる可能性が高まるため,治療開始前のマグネシウム濃度測定が特に重要である。医療従事者は,これらの患者で定期的なマグネシウム濃度測定を検討すべきである。

全PPI処方箋薬の添付文書の「警告および使用上の注意」に,PPIによる血清中マグネシウム濃度低下のリスクに関する情報を追加する予定である。

◇患者向け追加情報

・PPIを服用中に,心拍数や心拍リズムの異常,あるいは頻脈,動悸,筋痙縮,振戦,痙攣等の症状が現れた場合は,直ちに治療を受けること。小児では,心拍異常は,疲労感,胃腸の不調,浮動性めまい,朦朧状態を引き起こすことがある。

・以前に血中マグネシウム濃度が低いと言われたことがある場合や,digoxin,利尿薬,または低マグネシウム血症を引き起こす可能性がある薬剤を使用している場合は,担当の医療従事者に伝えること。

◇医療従事者向けの追加情報

・低マグネシウム血症は,ループ利尿薬(furosemide,bumetanide,torsemide,ethacrynic acid)でも,チアジド系利尿薬(chlorothiazide,hydrochlorothiazide,indapamide,metolazone)でも起こることがある。これらの薬剤は,単剤使用時,あるいは他の降圧薬(例:β遮断薬,アンジオテンシン受容体遮断薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬)との併用時に低マグネシウム血症を引き起こすことがある。

・患者に対し,PPI服用中に不整脈,テタニー,振戦,痙攣が起きた場合は,直ちに医療従事者による治療を受けるよう助言すること。これらは低マグネシウム血症の徴候の可能性がある。

・臨床的に低マグネシウム血症の症状や徴候がある患者では特に,原因の1つとしてPPIを検討すること。

・PPIのOTC薬を,消費者が自分の判断で,または医療従事者の助言にしたがって,添付文書の指示を超える期間で服用している可能性があることを認識すること。これは適応外使用とみなされる。患者にPPIのOTC薬の長期服用を助言する場合,医療従事者は低マグネシウム血症のリスクを患者に伝えること。

◇データの概要

FDAは,PPI長期服用患者での低マグネシウム血症について,AERS(有害事象報告システム),医学文献,およびPSUR(定期的安全性最新報告書)からの症例報告をレビューした。本レビューは,AERSの38例と文献報告の23例(AERSで特定した症例が8例以上含まれている)に焦点を絞って行った1-8)。AERS症例では,利尿薬を使用中の患者を除外した。文献で報告された症例は,利尿薬を使用中で,(a)利尿薬を変更しても血清中マグネシウム濃度に改善が見られなかった症例,および(b)PPIの服用中止の記録と同時に血清中マグネシウム濃度の増加が見られた症例であった。FDAのレビューでは,低マグネシウム血症が関係する重篤な有害事象とPPIの長期服用との関連性が示唆された。しかしながら,低マグネシウム血症については認識不足により過少報告される傾向があるため,得られたデータは,PPI療法による低マグネシウム血症の発生率を求めるには不十分であった。

低マグネシウム血症は,PPIを3カ月以上服用中の成人患者で報告されているが,大半の症例は1年の治療の後に発生していた。これらの症例の約4分の1は,マグネシウム補充に加えPPIの服用中止を必要とした。一部の症例には,positive dechallenge(PPI服用中止による低マグネシウム血症からの回復)と,positive rechallenge(PPI服用再開による低マグネシウム血症の再発)の記載があった。PPI服用中止後にマグネシウム濃度が正常化するのに要した期間の中央値は1週間であった。PPI服用再開後に低マグネシウム血症が再発した期間の中央値は2週間であった。レビューした症例の大半で,患者は低マグネシウム血症の治療後にPPIの服用を中止していた。

Positive dechallengeの症例として63歳の女性患者と67歳の男性患者の例を示す。両者はそれぞれPPIを6年間と11年間服用していた。どちらの患者も痙攣と低マグネシウム血症を呈した。二人ともマグネシウムの静脈内補充により低マグネシウム血症が部分的に改善したが,症状の持続とマグネシウム喪失を阻止するためにはPPIの服用中止が必要であった。

臨床的に重篤な有害事象は,低マグネシウム血症でよく報告される徴候・症状と一致していたが,これらは低カルシウム血症で報告される徴候・症状と類似している。重篤な事象には,テタニー,痙攣,振戦,手足痙攣,心房細動,上室性頻拍,異常なQT間隔が含まれていた。低マグネシウム血症は副甲状腺ホルモンの分泌障害も引き起こし,さらに低カルシウム血症に至る可能性がある。包括的な臨床検査データが得られた症例では,大半の患者が低カルシウム血症を併発していたが,副甲状腺ホルモン濃度は正常であった。したがって,これらの所見により,主要な原因が低マグネシウム血症であることを確認できる。

PPIの長期服用と関連して低マグネシウム血症が発生する機序は不明であるが,PPIの長期服用は,マグネシウム腸管吸収の変化と関連する可能性がある5)。

文 献

1) Broeren MA, Geerdink EA, Vader HL, van den Wall Bake AW. Hypomagnesium induced by several proton-pump inhibitors. Ann Intern Med ( 2009). 151(10); 755-756.

2) Cundy T, Dissanayake A. Severe hypomagnesemia in long-term users of proton-pump inhibitors. Clinical Endocrinology (2008). 69; 338-341.

3) Epstein M, McGrath S, Law F. Proton-pump inhibitors and hypomagnesemic hypoparathyroidism. NEJM. October 26, 2006. 355;17:1,834-1,836.

4) Hoorn EJ, MD, van der Hoek J, de Man RA, Kuipers EJ, et al. A case series of proton pump inhibitor–induced hypomagnesemia. Am J Kidney Dis. February 25 2010. (epub).

5) Kuipers MT, Thang HD, Arntzenius AB. Hypomagnesaemia due to use of proton pump inhibitors—a review. Neth J Med (2009). 67(5);169-172.

6) Metz DC, Sostek MB, Ruszniewski P, Forsmark CE, et al. Effects of esomeprazole on acid output in 9 patients with Zollinger-Ellison syndrome or idiopathic gastric acid hypersecretion. Am J Gastroenterol. (2007). 102(12); 2648-2654.

7) Shabajee N, Lamb E, Sturgess I, Sumathipala R. Omeprazole and refractory hypomagnesemia. BMJ (2008): 337; 173-175.

8) Mackay JD and Bladon PT. Hypomagnesaemia due to proton-pump inhibitor therapy: a clinical case series. QJ Med 2010; 103

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