ドクターG:プライマリケア現場での精神疾患の診断

教育症例カンファレンス2013年8月20日(藤田保健衛生大総合救急内科 山中克郎教授)

「胸がドキドキします」 -MAPSOを知っていますか?-

 

Psychiatry in primary care (PIPC)は一般臨床医が実際の臨床現場において、精神症状や精神疾患に気付き、それを診断し、治療できる能力を効果的・効率的に行うためのものである。PIPCでは、精神疾患に関するエッセンスを、精神疾患の経症例が集積するプライマリケアの現場で出会う頻度を考慮して、システマティックかつコンパクトに絞り込み、実践で役立つ知識として工夫されている。中でも骨格をなすのは、「MAPSO」の配列で分類された診断システムである。

(丸山文夫、内藤宏:PIPC診断システム、現代医学63: 447-454, 2009)

 

患者:32歳、男性

主訴:動悸

現病歴:3か月前より時々胸がドキドキする。

本日、仕事中に1時間前から突然、胸の圧迫される感じがある。

救急車にて来院。

既往歴:なし

社会歴:たばこ(-)酒:機会飲酒

 

何を考えますか?

見学学生(5年生):不整脈、精神的、狭心症

研修医:内分泌疾患、電解質異常など

 

現症:

36.3度、124/86 脈拍100~130/分 呼吸数23回/分 100%RA

他に異常なし

もっと聞きたいことはありますか?

プライマリケア外来患者を訪れる患者の25%は何らかの精神疾患がある。

 

検査:

EKG:洞性頻脈

胸部XP:正常

血液検査:正常

 

精神疾患の診断

MAPSOシステムhttp://fhugim.com/?p=763

“MAPSOシステム”は、『一般内科医がどうしたら精神科用語と概念を整理して理解していけばいいのか』、という方法を、米国の内科専門医/精神科専門医であるDr. R.K. Schneiderが考案したもので、日本では神奈川県の信愛クリニック院長の井出広幸先生が翻訳し普及に努められています。実際には、以下の項目に沿って問診を進めていきます。

M: Mood 気分障害→うつ

A: Anxiety 不安障害

P: Psychosis 精神病

S: Substances  薬物中毒(脱法ハーブ、覚せい剤など)

O: Organic  器質的疾患

Other Psych  人格障害、身体表現性障害(めまい、しびれ、痛みなど)、拒食症。

注意欠陥・多動性障害

Mood

大うつ病

気分変調障害

双極性障害

双極性障害は、躁状態を伴う双極 I 型障害(英: bipolar I disorder)と、軽躁状態を伴う双極 II 型障害(英: bipolar II disorder)に区分される。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8C%E6%A5%B5%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3

うつ病のスクリーニング

M:mood(気分障害)

①     抑うつ気分「ここ一カ月、気分が沈みこんだり、ゆううつになったりすることはありませんか?」

②     興味や喜びの喪失「ここ一カ月、今まで好きだったことが今でも楽しくできていますか?」

(高齢者では初診時30%しかうつ病と認識されていない。5年後も50%のみ)

 

双極性障害診断のためのスクリーニング

・眠る必要がないほど、ハイな気分になったことがありますか?

・いつもと異なり、乱暴な行動をとったことがありますか?

(注意:躁うつ病の患者に抗うつ薬を出すと、ハイテンションになる)

 

A: anxiety(不安障害)

G-POPS

①    G: generalized anxiety disorder 全般性不安障害

「あなたは心配症ですか?」

「心配しないようにすることが無理だと感じますか?」

 

②     P: Panic disorder   パニック障害

「急に心臓がドキドキしたり、息がつまったり、吐き気を感じることはありますか?」

「このまま死んじゃうじゃないかと恐怖や不安を感じたことはありますか?」

 

③      O: Obsessive compulsive disorder 強迫性障害

「外出の時、家の鍵やガスの元栓を何度も確認してしまいませんか?」(20~30回)

「手や体を何度も洗わないと気がすまないですか?」

 

④      P:PTSD   外傷後ストレス障害

「これまでに死にそうになるひどい体験をしたことがありますか?」

「そのひどい出来事がフラッシュバックすることがありますか?」

 

⑤      S:social anxiety disorder   社会不安性障害

「人前でスピーチをするのは苦手ですか?」

「恥をかくことで社会生活を妨げられることがありますか?」

 

P:psychosis(精神病)

・あなたの声でない声はしますか?(会話性幻聴)

・その声があなたのやることにいちいち口を出したりしますか?(実況解説幻聴)

幻覚(幻聴、幻視、幻臭など)、妄想(関係妄想、被害妄想、心気妄想、誇大妄想など)、解体症状(錯乱、思考と行動の乖離など)の確認

žS: substances(物質関連障害)

薬物・カフェイン・ニコチン・覚醒剤・麻薬などの乱用、依存、離脱

žO: organic/other(器質性/その他)

ちなみに不安障害はG: Generalized anxiety disorder(全般性不安障害)、P:Panic disorder(パニック障害)、 O: Obsessive compulsive disorder(強迫性障害)、 P: PTSD, S: Social anxiety disorder(恐怖症:社会不安性障害)の頭文字をとって“G‐POPS”と覚えます(藤田保健衛生大学の井野教授の考案です)。

山中教授:“MAPSOシステム”は『医者と患者』という関係を『人と人』の関係に変える魔法のツールだと思います。

「症例の追加問診」

・抑うつ気分はない

・映画を見るのが今も大好き

・人前でスピーチするとドキドキする

・仕事中や夜間に突然動悸がして胸が苦しくなる

・もうすぐ結婚することになっているが、結婚生活がうまくいくかどうか不安

・自分以外の声が聞こえることはない

 

診断

不安障害:パニック発作

何回もある場合はパニック障害

(スピーチ

http://blog.with2.net/link.php/36571

(ブログランキングに登録していますのでよろしく)

するとドキドキあり:社会不安性障害の可能性について質問した)

 

marugametorao について

神経内科専門医 neurologist
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