てんかん重積の脳MRI所見
2001年1月に当院に赴任したが、ある土曜日に待機であったので、救急外来診察に呼ばれた。50歳代の男性は、JCS200で左片麻痺、左共同偏視、左顔面のけいれん、両側Babinski徴候を示していた。脳底動脈血栓症として治療、抗てんかん薬も加えた。数日で急性肝腎不全、DICとなり、4日目に死亡した。MR画像はDWIにて右大脳半球皮質の広範な高信号域と皮質の浮腫を認めた。剖検も行い、どのような病態であるか、当時わからなかった。
名大放射線科助教授に直接訪問し、脳MR画像の助言を求めたがわからないとの返事であった。ある研究会で近隣の神経放射線の専門医にも相談したが、診断はつかなかった。まさか世界第1例の症例であるはずがないと思って、PubMedにてキーワード検索をすると、
症例を経験する半年前にまったく同様の脳MR所見と神経病理を呈したてんかん重積の症例が、Am J Neuroradiolに報告されていた。このジャーナルは神経放射線領域のトップジャーナルの一つであるが、大学の神経放射線の専門医なら読んでいるはずだと思った。
その当時、柳下章先生のことは存知あげていなかったが、彼にコンサルトしたら、即座に正解を教えてくれたのではないかと思っている。画像診断で判定に困るときは柳下先生に最近ではメールで相談している。てんかん重積の脳MR所見は数年後には症例報告が相次いだ。現在はその知識は常識となっている。日本神経病理学会と日本神経学会で報告したが、論文化されていないのが、残念である。
http://www.ajnr.org/content/21/10/1837.full
Men, S., Lee, D. H., Barron, J. R., & Muñoz, D. G. (2000). Selective neuronal necrosis associated with status epilepticus: MR findings. American Journal of Neuroradiology, 21, 1837-1840.
http://www.neurology.org/content/52/5/1021.full
Lansberg MG, O’Brien MW, Norbash AM, Moseley ME, Morrel M, Albers GW. MRI abnormalities associated with partial status epilepticus. Neurology 1999; 52:1021-1027
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