日本人間ドック学会の新基準値を正常値と判断することは大間違いである!

日本人間ドック学会の新基準値を正常値と判断することは大間違いである!

新聞や週刊誌の報道などを見ると、国民が間違った医学情報を持ってしまったのではないかと大いに危惧する。関連学会や日本医学会が反論の声明を出しているが、あまり、マスコミにはとりあげられていない。

日本人間ドック学会は下記のリンクの報告で、新基準値は判断値(正常値)とは異なることを明記しているが、マスコミが間違って報道してしまったのが、真相のようだ。

http://www.ningen-dock.jp/other/release (日本人間ドック学会)

http://gohoo.org/alerts/140415/ (日本報道検証機構:人間ドック学会、健康基準を緩和」は事実誤認)

新たな健診の基本検査の基準範囲日本人間ドック学会と健保連による150 万人のメガスタディーからの引用:

http://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E7%94%A8PDF%EF%BC%88140409%E5%B7%AE%E3%81%97%E6%9B%BF%E3%81%88%EF%BC%89.pdf

「6. 今回解析した基準範囲の意義と今後の展望

基準範囲とは、国際的に認められている方法で、一定の条件を満たすいわゆる健康人(基準個体)をある集団から抜粋し、その試料を検査して測定値を得て設定するものである。すなわち、ここでは約150 万人の中から、既往歴、現病歴、検査値などで異常がないとされた個体を選別し、その後に他の関連検査項目における異常値の有無で二次除外を施行した。その数は検査項目で異なるが、最終的には約1 万~1 万5 千人の健康人の集団の検査値である。

これに対し、健診などに使用される臨床検査の判断値は、基準範囲とは異なり疾患の疫学的研究によって得られた成績を基に、専門学会などで設定されたものである。

したがって両者は互いに異なるものであるが、一般的には基準範囲イコール正常値あるいは疾患判別値と理解されるケースがしばしばある。そのため、基準範囲が一人歩きし、疾患の診断や治療に影響を与える可能性がある。

ここで設定した基準範囲はあくまで上記定義に基づいて、人間ドック受診者の検査データを用いて予防医学的な観点から設定したものである事をよく認識して頂きたい。したがって今回の基準範囲の人間ドックに於ける運用に関しては今後の本学会及び健保連にて充分議論した後に進めていくべきと考える。さらに今回のいわゆる健康人のデータを5~10 年間追跡調査を行い、基準範囲の妥当性を検討する必要がある」

http://www.envmed.med.kyushu-u.ac.jp/

http://www.envmed.med.kyushu-u.ac.jp/research/disease04.html 久山町研究;高血圧

http://tomiyoshi-cl.com/app/Blogarticleview/index/ArticleId/129

日本人間ドック学会の新基準値に対する反論

先月、日本人間ドック学会が提唱した「新しい基準値」について、4月24日の院長ブログで当院のスタンスを述べさせて頂きましたが、関係学会からも反論が出ているようです。

日本高血圧学会 は4月14日付で、

「日本人間ドック学会の血圧の基準値は、

心血管病発病の危険性が高まるかどうか、治療介入の必要性があるかどうかは検討されていない。日本高血圧学会では、140/90mmHg以上を高血圧としており、収縮期血圧140~147mmHg、拡張期血圧90~94mmHgの方の一部には、「要再検査、要治療」が含まれていると御理解頂くのが正確である。(抜粋)」 とのコメントを発出しており、

日本動脈硬化学会 は4月23日付で、

「日本動脈硬化学会においては、高LDLコレステロール血症の基準値を140mg/dl以上としている。

人間ドック学会は、超健康人のデータを解析して、基準値を定めているが、この集団には治療すべき対象も数多く含まれている可能性や、また無症状であるが潜在性の粥状動脈硬化症等の疾患も有する症例は数多く混在していることは否定できない。すなわち、たまたまその時点で脳 ・ 心血管イベント(脳梗塞や心筋梗塞)を免れている人も含まれていて、それは将来の低リスクを保証するものではない。

今回人間ドック学会が提唱しているように、現在の測定値分布に基づいて基準を設定するアプローチ法では、現在の心血管イベント発症リスクをそのまま是認することになり、人間ドックの目的の一つである疾病予防を目指す基準値を定めるという姿勢が取り入れられていないことも大きな問題である。

日本動脈硬化学会としてはこのような誤解を生じる可能性のある人間ドック学会の『基準範囲』は日本国民の健康に悪影響を及ぼしかねない危険なものである。(抜粋)」 との見解を示しています。

また、臨床研究適正評価教育機構 は5月14日付で、今回の報道について、「あたかも健康基準を緩和したかのような事実誤認の表現として一部マスコミなどで報道されていることに対し、遺憾の意を表する。」 との見解を発表しました。

ちなみに、その時の見出しは、

朝日新聞 「『健康』基準 広げます 人間ドック学会 血圧や肥満度」

毎日新聞 「『健康』な人が増える? 人間ドック検査で新基準」

産経新聞 「人間ドック学会など新基準値 男性の中性脂肪『高くても健康』」

確かに、見出しを見ているだけでも誤解してしまいそうですね。

さらに、同機構は以下のような見解を表しています。

① このたび日本人間ドック学会が発表した基準値は、あくまでも2011年に人間ドックと健診を受けた人のデータから、その時点で健康と考えられる人の血圧、コレステロールの分布範囲を示したものであり、将来の脳卒中や心筋梗塞などを発症する可能性に対する安全基準に言及した数値ではありません。

② 日本動脈硬化学会や日本高血圧学会が発表しているコレステロールや血圧の基準値は、

脳卒中や心筋梗塞などの発症予防のための基準値であり、世界や日本で行われてきた一般住民の科学的な長期的追跡調査の結果から導きだされたものです。単年度の人間ドックや健診受診者の血圧やコレステロールの分布範囲からは、将来の心血管疾患の発症を予測する数字は、もとめられるものではありません。

③ 今回の報道に関して、メディアの方々には、脳卒中や心筋梗塞という取り返しのつかない疾患を未然に防ぐという予防医学の視点での科学的根拠にもとづいた正確な報道をされることを期待します。

http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2014/05/0522.html

どうなる“健康の基準”

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20140521_11.pdf

平 成 26 年 5 月 21 日

公益社団法人 日本医師会

日本医学会

新たな健診の基本検査の基準範囲(日本人間ドック学会・健保連)

に対する日本医師会・日本医学会の見解について

本年4 月、日本人間ドック学会および健康保険組合連合会は、両団体で設置した「検査基準値及び有効性に関する調査研究小委員会」(以下、小委員会という)がとりまとめた「新たな健診の基本検査の基準範囲―日本人間ドック学会と健保連による150 万人のメガスタディ」を公表した。同報告によれば、人間ドック受診者約150 万人のデータから、約34 万人の「健康人」を抽出し、そのなかから7 分の1 をランダムに抽出したうえで統計的な異常値除外処理をした約1 万~1 万5 千人(超健康人・スーパーノーマルの人)の検査値から、新たに血圧、BMI、血糖、コレステロール等、27 項目の基準範囲を設定したとしている。

一例をあげると、

・収縮期血圧:従来基準値=129 mmHg

今回の報告=下限88 mmHg、上限147mmHg

・拡張期血圧:従来基準値=84 mmHg 以下

今回の報告=下限51 mmHg、上限94mmHg

と従来の基準値から大きく変化している。

これらの結果について、新聞、テレビをはじめ多くのメディアがとり上げ、「血圧147 は健康」などと報じ、国民にとっては、各検査値に2 種類の基準値が示されたこととなり、医療現場は大きな混乱を来している。また、今回の新たな基準範囲の設定と公表により、関係学会も困惑しそれぞれ見解を出している。そもそも今回の報告書によれば、「今回設定した基準範囲は各専門学会が推挙する基準値とは定義や設定方法が異なるので、同一には比較できない」としながらも、一方で「今後健診機関の共用基準範囲として健診の場で用いられることが期待される」としている。

基準値は、従来各専門学会が諸外国などの基準値なども参考にしながら、日本人の身体的特性を考慮し、例えば、血圧値、コレステロール値等では、将来起こりうる心血管病(冠動脈疾患や脳卒中)発症のリスク評価を行った久山町研究、大迫研究、NIPPON DATA80 などの長期コホート(前向き追跡)研究などにより十分な検討を経て設定されているものである。

また、各学会が示している基準値は、必ずしもこれに該当しなければ一律に薬物治療などの「要治療」に該当するとしているわけではなく、個々の患者の病歴、家族歴、運動や食事、喫煙、飲酒などの生活習慣なども考慮して、それぞれの医師が治療を含めた方針を決定するための指標である。今回人間ドック学会が個々の基準値について関係専門学会と事前の十分な検討・協議もないままに唐突に新たな値を公表したことは、多くの国民に誤解を与え、医療現場の混乱を招いている実態に鑑みても、「拙速」と言わざるを得ない。

小委員会が公表した報告書には、本研究の特徴として150 万人の人間ドック受診者の検査データを分析した「今までになくエビデンスレベルの非常に高いデータ」と記載されており、たしかにメガデータであることは間違いないが、リスク評価のできない大規模横断調査であって、決して将来の疾病発症を予測できる前向き追跡コホート研究でないことから、エビデンスが高いとは言えないものである。さらに、報告書の後段には「したがって今回の基準範囲の人間ドックに於ける運用に関しては今後の本学会及び健保連にて充分議論した後に進めていくべきと考える。さらに、今回のいわゆる健康人のデータを5~10 年間追跡調査を行い、基準範囲の妥当性を検討する必要がある」と述べているように、疫学的にも予防医学的観点からもエビデンスを確定したうえで公表すべきで、そのエビデンスの判断を関係学会と検討することは当然である。具体的には、今回「健康人」と定義した対象者について、その後の各検査値の変化等を検証することや、「健康人」以外の人間ドック受診者について、医療の介入の有無による影響等(罹患率や死亡率、介護度などのエンドポイント)を的確に把握し疾病発症リスクを算出することである。

また、今回の報告書では、新たな基準範囲の設定の目的を「人間ドック健診の有用性をより明確にし、多くの加入者の生活の質の向上と医療費適正化に資する」ことと明記している。医療費の適正化は、適切な健診受診等により「結果」として派生するものであり、適正化自体を目的とした基準範囲の設定であれば、本末転倒と言わざるを得ない。言うまでもなく、健診の意義は、疾病やそのリスクの早期発見であり、適切な医療等の早期介入により、個々人の健康の維持・増進を図ることにある。各メディアにおかれては、このことを十分に理解したうえで適切な報道をお願いするとともに、人間ドック学会と健保連におかれては、早急に日本医学会、関係専門学会等との十分かつ慎重な検討を行うなどの対応を求めたい。

http://blog.with2.net/link.php/36571ブログランキングに登録しています。

marugametorao について

神経内科専門医 neurologist
カテゴリー: ニュースと政治, 神経内科医, 神経学, 健康, 医学, 医学教育, 挑戦 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中