運動ニューロン病:診断のピットフォール

運動ニューロン病:診断のピットフォール

Williams TL: Motor neurone disease: diagnostic pitfalls. Clinical Medicine 13: 97–100, 2013

http://www.clinmed.rcpjournal.org/content/13/1/97

発症, 進行速度, 部位がかなり異なることから診断が遅れることが多い。

四肢を障害する下位運動ニューロン(LMN)症候群

症状がLMNのみを障害する場合は, 誤診はより頻繁に見られ, MNDの誤診率は20%に達する。いくつかのMND類似疾患は治療可能であり, 非常に予後が良いことは重要である。したがって, 評価のために, このような患者の専門医神経内科的サービスへの迅速な照会は重要である。専門医の手中にあっても, 継時的な評価は正確な診断をつけるのに必要なことが多く, また、臨床的なフォローアップはどれだけ誇張してもし過ぎることはない。

鑑別診断

遺伝性疾患:脊髄性筋萎縮症, 球脊髄性筋萎縮症, ヘキソサミニデース欠損症, ミトコンド リア病, triple A (Allgrove) 症候群, 多糖体小体病, 遺伝性痙性対麻痺, adrenomyeloneuropathy

有毒性、代謝性疾患:放射線脊髄症, 副甲状腺機能亢進症, 鉛中毒, 水銀中毒, 銅欠乏症

感染性疾患:ポリオ後症候群, ライム病, HIV

免疫性, 炎症性症候群:異常蛋白血症ニューロパチー, 伝導ブロックニューロパチー, シェーグレン症候群, 封入体筋炎, グルテン感受性, 重症筋無力症, 多発筋炎

構造的疾患:脊椎症性脊髄症, 頭蓋底病変, 大後頭孔病変, 内因性, 外因性脊髄腫瘍, 腰仙髄神経根症

他の疾患:Cramp-fasciculation 症候群, 傍腫瘍性疾患,リンパ増殖性疾患,傍腫瘍性神経筋症候群 (Triple A症候群(Allgrove症候群): ACTH不応症に無涙症(alacrima)とアカラシア (achalasia)を伴う。精神運動発達遅滞、構音障害、筋力低下、運動失調、自律神経障害などがみられる)

MNDに類似する全身性、局所性~一肢発症の下位運動ニューロン(LMN)症候群

腕神経炎:突然発症の腕神経叢を障害する特発性炎症性疾患。強い痛みの後に脱力と筋萎縮が出現する。通常は単相性で良好な回復(不完全なこともあるが)を示し, 自然治癒性である。両側性に選択的に横隔神経を障害し, 無痛性のこともありうる。Parsonage–Turner症候群としても知られている。

Hirayama: 良性若年発症上肢一側肢筋萎縮症(benign juvenile onset monomelic amyotrophy または局所性髄節性脊髄性筋萎縮症(focal segmental spinal muscular atrophy)として知られている。1~3年は進行し, 進行しないかまたは回復はなく停止する。他の上肢やまれには下肢のサブクリニカルな障害がEMG/NCSで見られる。いわゆる「寒冷麻痺」や前腕のoblique amyotrophyが特徴的である。MNDは典型的にはより急速に進行し, 呼吸筋や球麻痺が出現する。大部分は日本とインド亜大陸で多くみられる。

伝導ブロックを伴う運動性ニューロパチー:典型的には60歳以下の発症でまれである。伝導ブロックはEMG/NCS検査で必ずしも容易には検出されない。萎縮のない筋肉(脱神経になっていない筋肉)の過度な脱力が見られる。抗ガングリオシドGM1自己抗体が陽性。

慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチー(CIDP:LMN徴候と髄液蛋白の著明な増加を示し局所性または全身性の脱力を来す純粋運動性症状を呈するまれな疾患。EMG/NCSにより、MNDとの鑑別は十分に可能である。

頚椎症性神経根障害:疼痛なしでも発症しうる。変形性疾患の患者は神経根性の疼痛を有している。脊椎症の最初の症状は進行性であるが, MNDでは見られない特徴である進行性は停止する。画像が脊椎症の患者を同定するのに役立つ。さらなる合併症として, 多くのALS患者は臨床的には無関係である可能性が高い変形性脊椎疾患の放射線学的証拠を持っている。(Chiles BW 3rd, et al: Cervical spondylotic myelopathy: patterns of neurological deficit and recovery after anterior cervical decompression. Neurosurgery 44:762–9, 1999)

Kennedy症候群:典型的には著明な球症状を有する緩徐進行性LMN症候群。構音障害に比して著明な舌の萎縮, 顔面下部(オトガイ部)の線維束性収縮が特徴的。運動症状とともに感覚性ニューロン障害がよくある。非運動性特徴として女性化乳房や小さい精巣を有する部分的な女性化が見られる。寿命はほとんど正常である。

放射線神経根障害:ときに脊髄症も見られる。精巣がんの男性や子宮頸がんの女性に多い。

大動脈周囲リンパ節の放射線照射は治療野に脊髄遠位部と馬尾を障害する。放射線誘発性動脈内膜炎による運動症候群が主である。

遠位性ミオパチー, 封入体筋炎(inclusion body myopathy (IBM) :典型的には緩徐進行性の左右対称性の脱力(MNDでは急速な進行と非対称性を呈する)。IBMでは遠位部と大腿四頭筋(萎縮を呈する)と長指屈筋の特徴的な障害。嚥下障害もIBMでは見られる。CKは正常範囲の2~10倍と中等度の増加を示す。遠位性ミオパチーとIBMのEMGは「神経原性」特徴を有する。MNDの誤診は13%にまで見られた。

キーポイント

  1. 反射が保たれている筋脱力と萎縮は他の疾患が証明されるまではMNDの可能性が高い。
  2. 50歳以上の患者での進行性無痛性脱力に直面する場合はMNDを考える。
  3. 神経徴候が局在性病変に帰することができるならば, 変形性脊椎疾患を考える。
  4. 一肢または両側肢発症のMNDはよくあるが, 他の良性で治療可能な状態が存在し、さらなる評価を急ぐべきである。
  5. 嚥下障害が構音障害を上回る患者ではMNDの診断に留意する。
  6. 進行性の脱力のない線維束性収縮はよくあり, 通常は良性の現象である。

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marugametorao について

神経内科専門医 neurologist
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