末梢性ニューロパチーの臨床的アプローチ

末梢性ニューロパチーの臨床的アプローチのキーポイントが下記の文献にまとめられているので紹介する。

  1. 末梢神経系は大径有髄運動性軸索と固有感覚, 振動覚, 軽い触覚を伝播する感覚性軸索と軽い触覚, 痛覚, 温度覚, 節前自律神経機能を伝播する小径有髄軸索と痛覚,温度覚,節後自律神経機能を伝播する小径無髄軸索より構成される。
  2. ニューロパチーの症状は運動性, 感覚性, 自律神経性でありうる。日常生活活動の障害に関する質問は情報を与える。

3.病歴は病気の進展の時間軸, 社会歴, 家族歴, 医療歴(ニューロパチーと関連する基礎疾患を含む), 外科系病歴, 神経毒性処方のreviewを含むべきである。

4.小趾の屈曲伸展の低下と母趾の伸展の低下は運動機能障害の早期の徴候となりうる。

  1. 感覚検査は末梢神経系解剖学と病気のパターン型の知識を持ってアプローチすべきである。

6.ATR(アキレス腱反射)の低下や消失は神経長依存性ニューロパチーではよくみられるが, 小径線維ニューロパチーでは,ATRは正常である。

  1. 歩行検査は徒手筋力検査では同定できない筋力低下を明らかにする。踵, つま先, 継足歩行, スクワット, ホップをさせてみる。
  2. ニューロパチーの特性評価は時間的プロファイル(発症の速度や期間), 遺伝, 解剖学的分類を含む。解剖学的分類は(1)線維型(運動性vs感覚性, 大径vs小径, 体性vs自律神経性),(2)障害される線維の部分(軸索vs髄鞘),(3)障害される神経の大まかな分布(例:神経長依存性,非依存性,多巣性)を含む。
  3. ニューロパチーの特性評価は臨床医が多くの中毒性, 遺伝性, 後天性疾患の鑑別に必要な検査を最小限にするのに役立つ。

10.大部分のニューロパチーは潜行性発症で慢性進行性である;1か月前後の急性発症はギラン・バレー症候群(GBS), 血管炎, ポルフィリア, 感染性原因 (例: ジフテリア, ライム病), 中毒性/薬物暴露 (例: 砒素, タリウム, 化学療法剤, ダプソン)を示唆する。

  1. ニューロパチーの家族歴, 感覚系症状陽性の欠如, 早期発症, 対称性, 骨格系異常の合併, 非常に緩徐進行性経過を有する患者では, ニューロパチーの遺伝性原因を考慮すべきである。
  2. 著明な自律神経性ニューロパチーは糖尿病, アミロイド―シス,GBSを示唆する。
  3. 脱髄性ニューロパチーを示唆する特徴は萎縮のない脱力, 近位部優位の神経長に依存しない分布, 臨床的または電気生理学的に非対称性/斑状の分布, 近位部の反射の障害, ミオキミアを含んでいる。
  4. 大部分のニューロパチーは対称性で神経長に依存し, 通常は代謝性, 特発性, 遺伝性, 中毒性状態に起因する。下肢の症状が膝まで上行すると, 手の症状が始まる。
  5. 著明な早期の近位部の障害, とくに臀部屈筋の脱力を呈するニューロパチーは, 脱髄性ニューロパチーの可能性をもたらす。近位部と遠位部の脱力が合併することは慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)の特徴である。
  6. ニューロパチーの成因に対する血液検査は空腹時血糖, 腎や肝機能を評価するための電解質, CBCと分画, ビタミンB12, 赤沈, TSH, 甲状腺機能検査, 血清免疫固定電気泳動を含むべきである。
  7. 遺伝検査は臨床症状, 遺伝パターン, 電気的診断分類に合わせると, 最も有効である。
  8. 電気的診断検査は末梢神経系障害の部位, 障害される神経の集団(運動性vs 大径線維感覚性), 重篤度, 障害部位, 障害神経の部分(軸索vs髄鞘), 慢性化, 再生状態を決定するのに有用である。
  9. 軸索性ニューロパチーでの神経伝導所見は, 感覚神経活動電位(sensory nerve action potential: SNAP)と複合筋活動電位(compound muscle action potential: CMAP)振幅の減弱を含む。脱髄性ニューロパチーでの所見は伝導速度の遅延, 遠位潜時 (distal latency) の延長, 伝導ブロック, 時間的分散 (temporal dispersion), 遠位CMAP持続時間の9msec以上の延長, F波最小潜時の著明な延長, F波が持続しない(impersistence),潜時のばらつき(chronodispersion), 欠如を含む。非対称性, 腓腹神経の回避, 同一神経での運動, 感覚機能の解離は後天性の脱髄性ニューロパチーの可能性または多発性単ニューロパチーを示唆している。
  10. 均一な脱髄性の特徴は, 後天性ニューロパチーよりも遺伝性ニューロパチーに関連していることがより一般的である。後天性のものでは伝導ブロックや時間的分散が通常見られる。
  11. 磁気刺激とsomatosensory-evoked potentials (SSEP) は, 神経根, 神経叢, 近位部の神経(例:大腿神経)の脱髄を同定するのに役立つ。
  12. 量的感覚検査は小径, 大径線維ニューロパチーの両者を同定するのに有用であるが, 患者の協力に依存して時間がかかり, 真に客観的ではなく, 機能障害を局在化することができない。
  13. 交感神経性汗腺神経検査は交感神経性皮膚反応 (sympathetic skin response: SSR), 量的汗腺神経軸索反射検査, 体温調節発汗検査を含む。心血管系評価は,深呼吸時のR-R間隔,バルサルバ法, 起立とtiltに対する血圧反応を含む。
  14. 小径線維ニューロパチーでは,発汗神経検査は心臓迷走神経検査より感度が高い。
  15. 十分な臨床的, 電気生理学的, 臨床検査評価以前には, 神経生検評価を施行すべきではない。

26.神経生検の威力は急性/亜急性,非対称性,多巣性,進行性ニューロパチーにおいて最良となる。

27.AAN practice parametersは,血管炎,サルコイドーシス,CIDPなどの炎症性疾患や

ハンセン病などの感染性疾患や腫瘍,アミロイド―シスなどの浸潤性疾患の診断における神経生検を推奨している。

28.神経生検はまた原因不明のびまん性ニューロパチーで推奨されているが,中毒性,代謝性状態に伴う遠位性,対称性,軸索性ニューロパチーにおいては有益であることはまれである。

  1. 皮膚生検は小径ニューロパチーの現在最も利用できる検査である。表皮内神経線維密度と神経線維形態が評価される。最も一般的な生検部位は腓腹筋遠位部と近位部外側大腿である。
  2. 汗腺神経線維密度の分析は, 自律神経と体性神経それぞれを評価するので, 小径線維の評価における表皮内神経線維密度に補完的となる。
  3. 皮膚生検は神経長依存性, 非依存性ニューロパチーを鑑別するのに役立つ。神経長依存性ニューロパチーでは, 近位部の表皮内神経線維密度(intraepidermal nerve fiber density: IENFD) は比較的に保たれているが, 一方,神経長非依存性ニューロパチーでは,近位部のIENFDは遠位部のIENFDよりも同等かまたはより障害されている。神経根症ではIENFDは正常である。
  4. 小径線維を研究するために推奨される最新の2つの技術は, 角膜の共焦点顕微鏡検査とlaser Doppler imager flareである。それに加えて, マイスナー小体密度 (in vivo の反射共焦点顕微鏡検査を利用する)と皮膚のしわの評価が開発の初期段階である。

文献

  1. Alport AR et al: Clinical approach to peripheral neuropathy: Anatomic localization and diagnostic testing. Continuum Lifelong Learning Neurol 18:13–38, 2012

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