HPVワクチンに関するWHO最新報告の問題点


WHOの最新報告について、村中璃子氏が次のような記事を書いている。

国賠訴訟が起きたからって薬害じゃないことも――子宮頸がんワクチン国賠に思う(note)

引用開始: 今回のWHOの声明はこのように締めくくられた。 「2017年、GACVSはシステマティックレビュー(論文をくまなく検索すること)を行い、良質なコホートを用いた世界各国のランダム化比較試験(バイアスを排除した最も信頼性の高い研究)を対象とする73,697症例についての分析を行ったところ、すべての症状について子宮頸がんワクチンとの因果関係が認められないという結論を得た。しかし、科学的分析とは裏腹に、世界では症例観察に基づく誤った報告や根拠のない主張が注目を集めている。今後もモニタリングを続け、大規模データの解析を通じてワクチンへの信頼を維持していくことが大切だが、その過程で、科学的実体をもたないアーチファクト(二次的な事象)が観察されることがある。これこそが「挑戦」だ」(引用終了)

コメント:

RCTのエビデンスレベルの高い治験のみ検討し、症例観察研究はレベルが低いとして軽視している。HPVワクチンによる副反応疑いの発生頻度は低く、日本では約0.09%である。鹿児島大学神経内科髙嶋博教授の最新のデータでは鹿児島県におけるHPVワクチン接種後神経障害の頻度は、1/1500である。

過去に行われたRCTの問題点は3つだけ挙げてみる。

1.数百人~数千規模の小数例の検討ではシグナルの発見は困難であり、症例観察研究が重要である。このことはワクチンの副反応を判定するマニュアルにも記載されている。 2.RCTの治験計画では、placeboとして、inactive placeboである生理食塩水を使用している研究は非常に少ない(ある論文によると、HPV ワクチンの16件の治験のうち、生食を対照としたのは、2件のみであった)。ほとんどのplaceboでは、アルミニウムアジュバントを含んでいて、治験群と有意差が出にくくなっている。このことは、Cochrane Libraryでも問題を指摘しており、調査が実施される予定である。

3.現在の基準では多彩な症状を判定することはできない。単一症状で検討しているだけ。多数の症例観察研究が重要である。

参考文献:

1. CAUSALITY ASSESSMENT OF AN ADVERSE EVENT FOLLOWING IMMUNIZATION (AEFI) User manual for the revised WHO classification WHO/HIS/EMP/QSS. MARCH 2013

ワクチン接種後の有害事象の因果関係の評価。p3の最後の段落、有害事象とワクチン接種との因果関係が不明確でも無視しないことが重要。ある時点でシグナルとして考えられ、因果関係を検査する特異的な研究で両者のリンクに関する仮説を導くかもしれない。個別の症例データをプールすることは仮説を生み出すのに非常に有用である。ロタウイルス ワクチンと腸重積の症例が良い例。初期の臨床治験ではワクチンは有用で統計学的に有意な重篤な有害事象を検出しなかった。市販後に腸重積が出現した。

2. Ogawa Y et al. Safety of HPV vaccines in healthy young women: a meta-analysis of 24 controlled studies, J Pharmaceutical Health Care and Sciences 2017 3:18 https://doi.org/10.1186/s40780-017-0087-6

Table1参照。対象数4千人未満は20件と規模が小さい(100~500人未満は9件、500~1000人未満は4件、1000~2000人未満は5件、2000人~3000人未満は1件、3000人~4000人未満は1件、5000人以上は4件(5,762人、6004人、12,167人、18,644人)。

3. The Cochrane Library: Aluminum adjuvants used in vaccines versus placebo or no intervention

HPVワクチンなどに含有されているアルミニウムアジュバントの安全性と危険性の調査計画の公表

4.子宮頸がんワクチン副反応の救済状況 PMDA 平成29年9月まで 処理  562  支給 258 不支給 310内訳(入院外支給 123判定不能 153否認 23 年金の障害でない 4 政令で認める程でない 7) 支給合計は381人 厚労省に上げられた副反応報告は3080人

5.黒岩義之ほか:ヒトパピローマウイルスワクチン接種後の神経障害:その病態仮説 神経内科 85:567-581,2016

HANSという新規の疾患概念が形成された経緯と病態仮説が詳細に記載されている。日本自律神経学会理事長である黒岩義之先生の神経内科医としての診断能力の高さと慧眼には頭が下がる思いである。しかも、専門の自律神経系の薀蓄を駆使して、新しい病態仮説を提示している。しかも、最近では、その仮説を支持する研究成果も発表されている。彼のライフワークとなるであろう。

線維筋痛症との鑑別は? 「HPVワクチン接種後神経障害」の患者は静かで非攻撃的で、自分から多くを語らず、顔をしかめるなどの表情表現を表さないのに対して、線維筋痛症の患者は多弁的、攻撃的、易怒的で、全身で痛みを身体表現するところが大きく異なる。前者で高頻度にみられる「サングラス徴候」は後者では非常に稀である。

「HPVワクチン接種後神経障害」のプライマリーな病態は視床下部機能の障害であり、線維筋痛症のプライマリーな病態は疼痛・情動関連機能の障害と考えられる。

視床下部病変による症候学: 1.自律神経症候、2.内分泌症候、3.アレルギー症候、4.認知情動症候、5.意識障害 6.感覚症候、7.運動症候 「HPVワクチン接種後神経障害」は脳室周囲器官の障害から始まる。

解剖学的診断:視床下部・辺縁系ネットワークの神経内分泌攪乱

病因論的診断:HPVワクチン接種後に生じた血管内皮・血液脳関門の慢性障害 視床下部を首座に置く脳室周囲器官、別名「脳の窓」は4大ドメインである自律神経・内分泌・炎症系、運動神経系、感覚神経系、認知情動神経系と密接な神経ネットワークを構成している。

病態生理:

1.第三脳室周囲の脳室周囲器官、別名「脳の窓」における血管内皮細胞とグリア・センサー細胞ネットワークの障害、

2.視床下部・辺縁系ネットワークのシナプス・受容体機能障害 症候の流れ 4大ドメインからなる慢性進行性の神経内分泌攪乱症候 ワクチン接種から30日未満に発症ピークを示した自律神経症候、睡眠・内分泌・炎症症候)、情動症候、痛みは「脳の窓(脳室周囲器官)」に近い「視床下部」の障害によると解釈される。

ワクチン接種から30日以上、6カ月未満に発症ピークを示した認知症候、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・体性感覚症候は「脳の窓」から少し遠い「視床下部と辺縁系ネットワーク」の障害によると解釈される。

ワクチン接種から6カ月以上、1年未満に発症ピークを示した運動・ロコモーション症候は「脳の窓」からさらに遠い「視床下部と前頭側頭運動野のネットワーク」の障害によると解釈される。

脳室周囲器官の7つの一般的特徴

1. 脳脊髄液・血液関門の役割を果たし、脳脊髄圧のセンサー。

2.血液脳関門によって保護されていない。

3.血管が豊富な「神経血管単位」である。

4.化学受容器引金帯であり、血液を介して化学物質の暴露されている。

5.神経炎症の舞台である。モノアミン分泌細胞、自然免疫細胞(ミクログリアやマスト細胞)が豊富に存在する。

6.代謝性疾患の標的となる(例:Wernicke脳症)。

7.液性自己免疫疾患の標的となる(例:神経脊髄炎)。

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