長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;横紋筋融解を反復する代謝性筋疾患


長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;横紋筋融解を反復する代謝性筋疾患

 

日本神経学会東海北陸地区生涯教育講演会 201037

 

筋疾患-病態と病理像、代表的疾患、生検の適応と注意

国立精神・神経センター疾病研究第一部部長

西野 一三先生

 

筋生検の注意事項と代表的な筋疾患の病理所見が講義された。前半はかなり初歩的な内容だったので、後半部に期待していた。

2点だけが参考になった。

1.成人発症Pompe病は、呼吸苦で呈することがあるので注意を要する。筋生検所見は典型例に比べて軽微なので間違いやすい。

http://worldpompe.org/images/uploads/04BreathingproblemsinPompedisease(Japanese).pdf

http://www.pmdrinsho.jp/img/Pompe_0208.pdf

 

2.テント状硬口蓋(high arched plate)が見られる場合は先天性ミオパチーを疑う。

 

筋生検所見ですべて診断可能のような話だったので、次のような質問をした。筋生検所見では診断できない代謝性疾患についての話も聞けるのではないかと期待していたのですが。

当院内科成人患者で何度も横紋筋融解を繰り返すため、筋生検を施行したが、診断できなかった。担当の内科医が熱心に調べた結果、福井大学の重松先生に酵素測定を依頼し、acyl-CoAなんとか?dehydrogenese欠損症であることが判明した。西野先生によると、極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(VLCAD deficiency)は30人の症例がいるとのことであった。

 

参考論文など:

症例報告

反復性の横紋筋融解症を呈した極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症の1成人例

 

浜野 均1, 篠原 幸人2, 瀧澤 俊也2, 徳岡 健太郎2, 風張 昌司1, 政所 広行1, 佐藤 晶1

1)東日本循環器病院・脳神経センター神経内科〔〒243-0433 神奈川県海老名市河原1519

2)東海大学医学部神経内科

 

18歳頃より運動,過労を契機に筋肉痛,筋力低下をくりかえし,29歳時に反復性の横紋筋融解症と診断された男性症例を経験した.30歳時に極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症のmuscular formと診断しえた.本症の報告例の多くは小児科領域からのもので成人例の報告は少ない.muscular formの際は横紋筋融解症等の筋症候のみを呈し,かつ18歳以上での成人発症例も欧米には散見される.反復性の横紋筋融解症を来たす疾患のひとつとして,小児科領域以外の内科あるいは神経内科領域でも念頭に置くべき疾患と考え報告する.

(臨床神経,432532572003

key words:極長鎖アシルCoA脱水素酵素, 成人発症, 横紋筋融解症, ミオグロブリン尿症

 

短報

再発性横紋筋融解症を呈し,生検筋の免疫染色により診断しえた骨格筋型極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症の1

 

坂田 尚広1, 川井 元晴1, 森松 光紀1, 大橋 裕子2, 西野 一三2, 長谷川 有紀3, 山口 清次3

 

1)山口大学医学部脳神経病態学講座〔〒755-8505 山口県宇部市南小串1-1-1

2)国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部

3)島根医科大学小児科

 

再発性横紋筋融解症を呈し,生検筋の免疫染色により診断しえた骨格筋型極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症の1例を報告した.症例は18歳女性である.15歳より運動後に横紋筋融解症を数回くりかえしていたが,原因不明であった.生検筋の抗VLCAD抗体による免疫染色,アシルCoA脱水素酵素活性測定にてVLCAD欠損症と診断した.姉も横紋筋融解症を少なくとも2回くりかえしており,遺伝子解析にて同症と診断された.原因不明の再発性横紋筋融解症を示す患者においては本症を考慮する必要があると考えられた.また本症例は免疫染色にて診断が確定した初の報告例である.免疫染色は本症を鑑別する際には,有用な診断法となると考えられる.

(臨床神経,435685702003

key words:横紋筋融解症, 極長鎖アシルCoA脱水素酵素, 免疫染色

 

ミトコンドリアβ酸化異常症日本人患者の病態・病因の解明

山口 清次

β酸化異常症は、正常に生活していながら急性脳症や突然死を起こす患者が多く、最近タンデムマスを導入した新生児マススクリーニングがなどによって注目されている.そこで日本人患者の実態調査、予後調査、酵素診断、病因解析を行ない次のような成果を得た. 1.日本人β酸化異常症患者の調査:アンケート等によって71例について調査した.日本人ではCPT2欠損症が最も多く、ついでVLCAD欠損症、グルタル酸血症2型の順であった.類縁疾患である有機酸血症の予後と比較したところ、β酸化異常症は乳児期以降の発症例が多いこと、知能予後は一般的に良い症例が比較的多いことがわかった. 2.VLCAD欠損症の研究:酵素診断、病因解析を行なった.現在までに21例の日本人患者を同定した.特にこの2年間で10例以上を発見し予想以上に多いことがわかった.欧米の症例に比べ、日本人患者の大部分が骨格筋型で軽例の多い傾向があった.臨床的重症度と残存酵素活性測定値の間には相関はなく、イムノブロットにおける酵素タンパク量と相関することが観察された.遺伝子解析において日本人には共通の変異が比較的多く、またphenotype/genotype correlationがあることが推察された. 3.グルタル酸血症2型の研究:日本人初のETF脱水素酵素欠損による症例を同定し、分子レベルで証明した.またあらたにETF欠損による日本人症例も3例同定した.ETF脱水素酵素欠損の症例も2例同定した. 4.GC/MSによるβ酸化異常症診断法の検討:検討した.簡便な血中遊離脂肪酸分析法を確立した.特にグルタル酸血症2型は、安定期の患者ではタンデムマスでも、GC/MSによる有機酸分析でも異常を見逃すことがあるが、血清分析がもっとも診断に有用なことを確かめた.また尿中有機酸分析で、ペルオキシソームβ酸化異常症における特徴を明らかにした.

http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/13470165

 

http://ghr.nlm.nih.gov/condition=verylongchainacylcoenzymeadehydrogenasedeficiency

http://merckmanual.jp/mmpej/sec19/ch296/ch296e.html#sec19-ch296-ch296e-2954

http://hobab.fc2web.com/sub6-FAOD.htm

http://medicalfinder.jp/ejournal/1406100187.html

http://mall-md.seikyou.ne.jp/book_detail/16049

 

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