認知症患者の診かた~神経内科の立場、精神科の立場:その違いと融合
第51回日本神経学会総会が東大の辻省次教授のもとで東京で開催されている。来年は名古屋大学の祖父江元教授が会長である。名大神経内科の事務担当者が日本神経学会設立50周年記念祝賀会に出席していた。恩師の祖父江逸郎先生、高橋昭先生も元気であった。
認知症患者の診かた~神経内科の立場、精神科の立場:その違いと融合
金沢大学の山田正仁教授と筑波大学の朝田隆教授がそれぞれの意見を出し合い、有意義なセミナーであった。
症例1;アルツハイマー型認知症
神経内科の立場からは、病名を患者、家族に告知して、病気に対する理解を深めてもらう。告知はケースバイケースではあるが、大学に来る患者は、認知症の治験の対象になることがあるため、前もって告知することが多い。精神科の立場からは、あまり告知しない。認知症がすすんでいる患者は病識がないことが多く、説明してもすぐに忘れてしまう。認知症家族の会に入ると、将来の病気の状態がわかるので、入りたくないという家族もある。
BPSDが見られる場合は全身状態のチェックが必要である。感染症、とくに足の爪白癬が化膿していることもある。抗コリン作用をもつバップフォーなどの頻尿の薬やPLなどの抗ヒスタミン薬には注意したほうが良い。抑肝散でカリウムが低下することがあり、漫然に投与せずに一時的に中止してもよい。デイケア利用は有効な対処法である。
患者は不安を持ち、配偶者から離れられないことが多い。Apathy(無気力)とうつを混同しないように。前者ではSSRIなどの抗うつ薬は無効である。
「介護うつ」が社会的問題になっている。子供が親を殺す事件が以前と比べ、3倍に増えている。また、介護者の自殺の問題もある。6月に金沢で開催される日本うつ病学会総会で「介護うつ」をテーマとしたシンポジウムがあるそうだ。
http://www.c-linkage.co.jp/jsmd7/contents/program.html
シンポジウム I
6月11日(金) 9:00~11:30(150分) 第1会場(コンサートホール)
介護者のメンタルヘルス―コメディカルの連携
オーガナイザー:朝田 隆 筑波大学 臨床医学系 精神医学
【趣旨・狙い】介護には労苦がつきものである。とくに認知症患者の介護者は、他の身体疾患をもつ患者の介護者とは異なった苦労を経験する。介護に派生する心身、社会、経済的な打撃の諸々が、介護負担のもとになる。これらが介護者のうつ症状につながり、時には自死、心中という結果にも至る。介護負担には心身の機能障害、ケアの総量、そして患者の精神症状・行動異常が寄与する。介護者のメンタルヘルスを改善しようと、既に一部では先駆的な試みもなされているが、まだ萌芽の状態である。進み行く高齢化社会におけるこの重要課題への認識と対応策開発が活性化するように願って企画した。
司 会:朝田 隆 筑波大学 臨床医学系 精神医学
姉・清水由貴子の死が教えてくれたこと
シンポジスト:清水 良子 介護自殺したとされる清水由貴子さんの妹
介護者とうつ -介護殺人事件にみられる介護者の現状と課題
シンポジスト:湯原 悦子 日本福祉大学
<死なないで!殺さないで!生きよう!メッセージ>の取り組み
-介護心中、介護殺人をなくしたいと願う、同じ介護体験者からの呼びかけ-
シンポジスト:田部井 康夫 社団法人認知症の人と家族の会
介護負担としてのうつ病のメカニズム:
その背景としての患者の生活障害と精神症状・行動異常
シンポジスト:朝田 隆 筑波大学 臨床医学系 精神医学
総評
指定討論:野村 総一郎 防衛医科大学校 精神科学講座
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