小川彰教授:病める日本の医療―我々は何をすべきか―


「病める日本の医療-我々は何をすべきか―」

小川 彰 岩手医科大学学長 2013年11月22 日 日本神経治療学会

小川教授の講演は初めて聞いたが、インパクトのある内容であったので紹介する。

日本の医療は世界一(国民は理解していないが)

1. OECDデータ2007

脳梗塞、脳出血入院死亡率は一番少ない。

2. WHO:world health report 2000

1位日本

USA健康レベル15位、総合目標達成度24位

(この報告に怒ったUSAはその後の調査を公開しないようにWHOに圧力を加えた)

Canada outbreaks US in health report card

Conference Board of Canada 2009  日本は1位, Canada 10位、US16位

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/043/gijiroku/1306334.htm

(今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第5回)議事録)

小川彰:さて、第五の論点として日本の現在医療レベル「日本の医療は世界一」について論じます。日本の医療を見てみたいと思います。これはWHOのデータとOECDのヘルスデータとカナダのデータを重ねたものでございますが、右上がWHOのデータでございます。世界二百何十か国のデータがずっと並んでございます。ここに日本があるわけですが、健康レベルは1位、そして総合目標達成度は1位、これは米国が24位で、こちらの総合目標達成度は、米国は15位でございます。

左下はOECDのヘルスデータ2007からとってきたものでございますが、左側が脳梗塞入院30日以内の院内致命率とありますが、OECDの平均が10%に対して、日本は3.3%と、世界一の質の医療提供をしている。結腸直腸がんも世界一でございます。

右下にございますのが、Conference Board of Canadaのデータです。実は、これはアメリカに対してカナダがどれだけ優れているかということを主張したくてカナダがつくったデータでございます。平均寿命、死亡率、がん、それから循環系疾患、呼吸器系疾患の障害、そして乳幼児死亡率など、11の基準で医療を総合評価したものでございますが、これは、そういう意味では、世界のデータを横に並べたデータとしては一番最近のもので、2009年に発表されました。

この中でお分かりいただけますように、日本の総合評価は1位でございますし、カナダが10位、そして米国が16位と最下位でございます。この米国に対してカナダがこれだけいいのだということを主張したいためにカナダがつくったデータでございますが、これが日本の医療が世界一であるということを証明することにもなっているわけでございます。

そういう意味で、先ほど矢野先生がお話になりましたように、医師養成も医療制度の変更も緩やかに進めていただかないと大変なことになります。現在、医師数が足りないとは言ってはいるものの、世界一の医療レベルと評価されている日本の医学医療を誤った方向に導くことだけはやめていただきたいということでございます。

3.2013 United States National Academies (アメリカの医療が低レベルであることを認めざるを得なくなった)

U.S. Health in International Perspective: Shorter Lives, Poorer Health

Japan 273  1位   U.S. 418

http://www.iom.edu/Reports/2013/US-Health-in-International-Perspective-Shorter-Lives-Poorer-Health.aspx

http://www.iom.edu/Reports/2013/US-Health-in-International-Perspective-Shorter-Lives-Poorer-Health/Video.aspx (わかりやすく問題点を説明しているビデオ)

4. やたらに高いマイクロカテーテル、心臓ペースメーカー:日本製はない

www.hitachi-medical.co.jp/tech/medix/pdf/vol53/P02-03.pdf

(小川教授の論点が述べられている)

MOSS協議:小泉・ブッシュイニシアチブ 2001~

アメリカの言うことを聞かねばならなくなっている

平成13年6月小泉・ブッシュ会談:

成長のための日米経済パートナーシップ合意

構造改革―規制緩和

小泉は国賊だ! 小泉は米国の犬だ!」小川教授は強調した。

1990年を境に日本が変わった。大学の新設が相次いだ。

医薬品の輸入超過が始まった。

医薬品の貿易収支

医薬品の輸入超過2.4兆円、医療機器1兆円/年

(TPPについて:

http://www.nikkeibp.co.jp/article/gdn/20111205/292623/?P=5

政府が各国と協議に入ると表明した「TPP(環太平洋経済連携協定)」に、医療界では警戒の色を強めている。混合診療の全面解禁、営利企業や民間保険の参入などによって、日本の医療の根底を揺るがしかねないというのである。「会議」でも11月17日「TPP交渉参加に関する全国医学部長病院長会議からの要望」を出し、政府に日本の医療制度、国民皆保険制度の堅持を求めていくこととした。

小川氏は、TPP以前に「SII(Structural Impediments Initiative:構造障壁イニシアティブ)」や小泉・ブッシュ会談による「規制改革および競争政策イニシアティブ」という“不平等条約”が存在するとして、外圧受け入れに警鐘を鳴らした。

これらは、「製造、輸入の承認、許可、価格設定は事前に米国に協議せよ」として、1985年に開始された「MOSS協議(Market-Oriented, Sector-Selective:市場指向型・分野別協議)」の流れを汲む協定で、「米国のイニシアティブで日本の医療市場に参入する」性格を持つ。事実、この協定により、「1990年以降、医薬品・医療機器の輸出入はバランスを崩し、現在では3兆円の輸入超過した」と、小川氏は指摘した上で、外国製のペースメーカーやマイクロカテーテルなどが日本の市場を席巻する“不平等な状態”が続いていると強調。TPP参加となれば、日本の国益にかなうルールを自ら設定することが不可欠である)

医療イノベーション:日本発の医薬品を作らなければならない。

年次改革要望書                                                                        

郵政民営化

貯金・保険金:350兆円

世界一の負債国の日本が破綻しないのは、日本国民の財産が預けられているから。

日本郵政が2015年に株式上場されるが、米国はこの大事な資産をねらっている。

民営化の民とは?――米国の民間保険会社のことである。

参考図書:関岡英之「奪われる日本」

http://www.amazon.co.jp/%E5%A5%AA%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E7%8F%BE%E4%BB/dp/4061498533

このよう問題点をマスコミが取り上げない理由:

Aflac, AIU, AIG, チューリッヒ、プルデンシャル、エジソン生命など:すべてがマスコミの大手スポンサー:

アフラックのテレビCMが放映されているが、本当はブラックスワンである!

混合診療の問題点

米国民間保険会社の思うつぼ

未承認抗がん剤を民間保険でカバー:高い医療費を払えるのは高額所得者のみ。

高額抗がん剤を民間保険でカバーできるなら、公的保険でカバーしなくてもよい。

国民皆保険の崩壊の危機

http://kongoshinryo.jpn.org/static/collapse_universal.html

TPPの毒素条項

ISDS条項

日本政府が外国企業に提訴され、敗訴すれば、巨額の補償金を国民が負担する

投資家vs 国家紛争解決条項:憲法より上位の法律

ラチット規定

規制改革の後戻りは認めらない。毒素規定

スーパー301条

米国保護主義の象徴

米国の国益を優先

http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/5ac2f6322be641ed90aef892b78e090d

(TTPの毒素条項)

(さらに、TPPにはいわゆる毒素条項と言われる内容がいくつも入っていますが、その代表的なものがISD条項とラチェット規定です。

まずISD条項=「Investor(投資家) State(国家) Dispute(紛争) Settlement(解決)」=「国家と投資家の間の紛争解決手続き」とは、ある国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度です。

確かに紛争解決手続きを前もって決めておくのは重要なのですが、問題はこのワシントンにある紛争解決センターが世界銀行傘下であることです。国際通貨基金=IMFはEU系の国際金融機関ですが、世界銀行はアメリカの支配下にあります。

現に、これまでにISDを使って46件の提訴がありましたが、31件が米国企業が原告で、中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がありましたし、逆にISD条項が発令された紛争で米政府が負けたことは一度もありません。

アメリカが訴訟上手なうえに、審判がアメリカ寄りなのですから、勝負になりません。)

高等教育機関への公的財政支出/対GDP比 2006年

OECD平均1.1% 日本0.5%:教育にお金をかけるべき。

医療は平時の安全保障

http://blog.with2.net/link.php/36571

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